使い捨てライターで倒産に晒された東海の再建を導いた、チャッカマン
2019年8月12日 13:27
親の目から解放されたのを幸いに、煙草と親しむようになったのは大学入学直後だった。当初は特用マッチで火をつけていた。が、2年生の時だった。現在の東海(株)が「チルチルミチル」という、100円の使い捨てライターを発売した。重宝した。だが東海はその後、一度倒産している。
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昨今、煙草をカートン買いするとコンビニなどでは使い捨てライターをつけてくれたりする。過日はBICのライターを貰った。その折に「チルチルミチル」のことを懐かしく思い出した。
調べてみた。1990年代前半には「国内シェア約7割」「海外シェア約5割」を占めていた。が、人件費の高騰で91年に120円に値上げした頃から雲行きがおかしくなった。「単純構造」だったことから、「特許」等の先行メリットを享受できないことも災いした。
値上げを契機に東南アジアや中国から安価製品が相次いで上陸した。92年に赤字に転落。94年に約722億円の負債総額を抱え倒産した。当時の伊藤忠燃料(現、伊藤忠エクネス)が株式を取得、再建の道を歩き始めた。しかし120円ライターでは、順調にことが進むはずもなかった。
再建の立役者は、チャッカマンの名称で知られる「点心棒」。野外での火熾しなどに便利なガスライター(東海が商品意匠登録済み)だった。使い捨てライターの生みの親でもある創業者:新田富士男氏が開発した。
同社ではチャッカマン開発の経緯をこう語っている。「新田が1982年に米国出張したのが契機。バーベキュウ―に招かれる機会があった。その折に新田は、日本にもこんな風にアウトドアライフを楽しむ時代が必ず来ると考えた。83年半ばにチャッカマンを発売している。当時、アニメ:ガッチャマンなど“マン”を製品・商品名につけることが流行っていたのが名称の由来と聞いている」。
いま東海はチャッカマンを日々、進化させている。例えば「小型チャッカマン」「(シニアや女性向け)チャッカン温もり(点火がソフト)」。そうする一方で「使い捨てライター」「簡易灰皿」なども展開している。
企業(事業)に躓きはつきものだが、それをクリアしていくのは経営者の「あくなき前向き姿勢」。チルチルミチルのその後を調べ、改めてそう痛感した。(記事:千葉明・記事一覧を見る)