建設業主要企業、売上や従業員数は増加も利益率や1人当たり売上は伸び悩み
2019年8月4日 09:32
東京商工リサーチとヒューマンタッチ総研が建設業の主要企業動向を発表し、売上高が伸びている企業が多い反面、利益率や1人当たり売上高が低下する企業があることが分かった。
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■売上高合計は過去10年で最高に
2日、東京商工リサーチが「2019年3月期決算上場ゼネコン57社業績動向調査」を発表した。57社の2019年3月期における売上高合計は12兆8,148億円で、前年同期比6.0%(7,357億円)増加した。2009年以降の10年間では、2009年3月期の売上高合計12兆6,492億円を超えて最高となった。また、売上高の伸び率でも2014年3月期の7.4%についで2番目に高い水準となっている。
■増収企業数は前年と同じ39社
57社のうち、売上高が前年同期を上回ったのは39社。前年と同数ながらも2年連続で増収企業が減収企業を上回っている。売上高トップは清水建設の1兆4,067億円で前年比11.4%増。以下、大林組、大成建設、鹿島建設、長谷工コーポレーションが続いている。また57社のうち、増収増益は27社、増収減益が12社、減収増益が3社、減収減益が15社となっている。
■利益率が6年ぶりに低下
粗利率は12.8%で前年の13.7%から0.9ポイント減、営業利益率は7.7%で同0.8ポイント減、経常利益率は8.2%で同0.6ポイント減、当期純利益率は5.7%で同0.4ポイント減と全てで前年割れ。同様に全てが前年割れとなったのは2013年3月以来。利益率が下降局面に転じた原因については「建築資材の高止まり」と「労務費の上昇」をあげ、「売上の伸びに対してコストアップ吸収が難しくなっている」と分析している。
■従業員数が5年前から15%増加
同日、ヒューマンタッチ総研が「建設業主要60社の従業員数及び労働生産性の動向」を発表した。これは、建設業を総合工事業(ゼネコン)、土木工事業、電気設備工事業、管工事業、プラントエンジニアリング業、住宅建設業の6業種に分けて、各業種の主要10社の業績などを集計・分析したもの。
2019年3月期における6業種の主要10社を合計した60社の従業員数は36万5,972人で、5年前の2015年3月期と比較して15.0%(4万7,750人)増加した。業種別では電気設備工事業が24.0%増と最も伸び率が高く、プラントエンジニアリング業が4.4%増と最も低かった。
■ゼネコンの1人当たり売上高は1億円超
1人当たり売上高が最も高い業種はゼネコンの1億240万円(前年比2.6%増、以下同じ)。ついで、住宅建設業が6,970万円(8.5%増)、土木工事業が6,720万円(5.9%減)、管工事業が6,490万円(12.3%増)、プラントエンジニアリング業が5,480万円(8.7%減)、電気設備工事業が4,160万円(4.0%増)となっており、売上高が減少した土木工事業とプラントエンジニアリング業については労働生産性の低下を危惧している。
■ゼネコンは主要な全10社で従業員数が増加
6業種における主要10社の内訳をみると、ゼネコンは全10社で従業員数が増加し、10社中8社で1人当たり売上高が増加。電気設備工事業は10社中9社で従業員数が増加し、8社で1人当たり売上高が増加。管工事業は従業員数、1人当たり売上高ともに10社中9社で増加。住宅建設業は10社中8社で従業員数が増加し、7社で1人当たり売上高が増加している。
■土木工事業やプラントエンジニアリング業は厳しい状況
一方で、土木工事業も全10社で従業員数が増加したものの、1人当たり売上高は10社中6社で減少した。1人当たり売上高ではライト工業が7,830万円で前期比16.7%増となったものの、NIPPOは6,820万円で同15.0%減、東亜道路工業は5,730万円で同15.2%減と大きく減少している。
プラントエンジニアリング業は従業員数、1人当たり売上高ともに10社中7社で増加。1人当たり売上高をみると、太平電業が5,060万円で前期比15.4%増、新興プランテックが6,800万円で同15.5%、富士古河E&Cが5,910万円で同15.0%増となったものの、日揮が6,880万円で25.9%減、千代田化工エンジニアリングが6,260万円で同11.9%減となるなど、減少した企業も目立つ。(記事:県田勢・記事一覧を見る)