米中摩擦の不確実性、中国は低迷続く 世界経済は20年に回復 内閣府

2019年8月1日 15:56

 秋の消費税増税を前に景気の行く先に注目が集まっている。現況では内需を中心に消費も設備投資も堅調に推移しているものの、先行きを示す諸指標では輸出関連を中心に減速感が強くなっている。この背景には米中貿易摩擦による世界貿易の縮小があり、その先行き不透明感が企業マインドに強い影響を与えていることは間違いないであろう。

 先月下旬、内閣府が経済財政白書「世界経済の潮流 2019年I~米中貿易摩擦の継続と不確実性の高まり」を公表し、その中で米中摩擦が世界経済に与える影響を分析している。

 国連各機関の米中摩擦に関連する先行き見込みを見ると、WTOが4月に公表した「世界貿易の見通し」では、世界貿易の伸びは17年の4.6%から関税措置実施の18年に3%と急激に落ち込み、19年の伸びは2.6%と試算、その後20年には3.0%まで回復するものの最大のリスク要因は米中貿易摩擦であるとしている。

 IMFは、6月に開催されたG20資料の中で、貿易摩擦による世界の実質GDPの押下げ効果を18年の関税措置で0.2%程度、5月の追加措置で0.3%程度、合計すると0.5%押し下げられるとしている。

 OECDの試算では、2022年央までに、米国のGDPは0.9%、中国は1.1%押し下げられ、ユーロ圏やアジア圏にも影響し、世界全体では0.7%程度押し下げられるとしている。

 中国貿易は輸出入ともに縮小しているが、対米輸出入の減少という直接的な影響のみでなく製造業の景況感の悪化や金融資本市場の不安定化など間接的な経路からも影響を受けている。日本を含む周辺アジア諸国では、中国経済の減速に伴い18年後半以降、中国内での生産用の中間財需要が低調となっており、特に半導体や電子部品を中国に多く輸出している韓国や台湾等で対中国輸出の落ち込みが顕著だ。日本においても19年に入ってから輸出入ともに貿易額の縮小傾向が続いており、その主要な要因は対中国輸出の減少である。

 その一方で台湾やベトナムなどで中国の代替として米国向け輸出が大幅に増加している。ベトナムでは中国からの輸入も増加しており、米国向け輸出の増加は迂回輸出の可能性が強い。

 中国への直接投資の動向は今のところ減速しながらもプラスを維持し、増加基調で推移しているものの、企業への調査結果等から先行きは不透明だ。

 白書では「米中双方における追加関税措置のエスカレーションは、米中両国のみならず、世界経済全体にとっても決して望ましいことではない。今後の米中間の貿易協議の進展が期待される」とまとめている。(編集担当:久保田雄城)

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