WHO、電子たばこなどの新型たばこに見解 その安全性は?
2019年8月1日 15:02
WHO(世界保健機構)は、7月26日付けの報告書の中で、いわゆる新型たばこは紙巻きたばこ(従来のたばこ)と同様、規制の対象にすべきとの見解を示した。
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新型たばこには、加熱式たばこと電子たばこ(電子ニコチン送達システム)がある。前者は、たばこの葉を加熱して蒸気を吸うタイプであり、後者は、主にニコチンの入った液体を加熱して蒸気を吸うタイプである。
加熱式たばこの蒸気に含まれる有害物質量は、調査データごとに大きく違っているが、概して、紙巻きたばこより少なく、電子たばこより多い。また、加熱式たばこからは、紙巻きたばこの煙には含まれない化学物質が検出されている。これらのことから、WHOは、加熱式たばこの安全性に関する情報は確定していないと判断した。
一方、より健康被害が小さいとされる電子たばこは、アメリカでこの8年間に、若者の20%以上に浸透するほどの人気となっている。しかしWHOは、電子たばこ蒸気中のニコチンの長期間摂取による健康被害は不明であり、火災の危険もはらんでいると指摘している。さらに、一般的に言われている、「紙巻きたばこの喫煙者に対する電子たばこの禁煙効果」についても根拠がないとした。
最近発表された、フランスでの7400人を超す喫煙者と禁煙者を対象にした大規模調査から、電子たばこが禁煙者の喫煙再開リスクを高めることが明らかになった。一方、電子たばこには喫煙抑制効果があるものの、その度合いは不明であるとして、電子たばこの喫煙に否定的な見解が示された。この報告は、WHOの主張の一部を支持するものである。
WHOでは、「たばこ業者の主張する新型たばこの安全性は、たばこ産業の市場拡大を狙ったもので根拠が薄い」としている。その上で、加熱式たばこも電子たばこも規制の対象から外すべきではないと主張している。
日本では、厚生労働省の「なくそう!望まない受動喫煙」キャンペーンにより、喫煙対策に弾みがつき始めた。ただ、喫煙者の中には、たばこから完全に離れられずに、新型たばこに鞍替えする人や、新型たばこと紙巻きたばこを併用する人の増加も目立つ。
新型たばこの健康被害については、たばこ業者と消費者団体との間で見解が大きく相違している。今回のWHO報告を機に、新型たばこの安全性について、きちんとした調査の施行が望まれる。(記事:仲村晶・記事一覧を見る)