ブラックホールでの一般相対性理論の検証に成功 すばる望遠鏡が貢献

2019年7月30日 19:27

 アインシュタインが提唱した一般相対性理論。米カリフォルニア大学ロサンゼルス校は25日、国立天文台が運営するすばる望遠鏡等を活用し、天の川銀河の中心位置する超大質量ブラックホールでの一般相対性理論の検証に成功したと発表した。強い重力のもとでの理論の検証は史上初のことだ。

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■一般相対性理論の検証

 一般相対性理論の検証は、1919年に英天文学者アーサー・エディントンによって最初に試みられた。同年に生じた皆既日食時、太陽近くにみえる恒星の位置を観測し、太陽の重力によって光が曲がっていることをエディントンは確認した。一般相対性理論はこれまで数多く検証されたが、ブラックホールの縁のような重力の強い場所では検証されてこなかった。

■強い重力をもつ超大質量ブラックホール

 われわれの住む天の川銀河の中心に位置する「いて座A*」には、超大質量ブラックホールが隠れていると考えられている。このブラックホールの質量は太陽の約400万倍にも及び、物質だけでなく光をも吸収するため、直接観測することはできない。

 研究グループは、いて座A*の周辺を軌道周期15.9年で公転する恒星「S0-2」に着目した。地球等の惑星は楕円軌道を描きながら太陽周辺を公転する。だがS0-2は、超大質量ブラックホールの重力の影響で、軌道は3次元構造をなしている。このS0-2の軌道の3次元構造を観測できたのは、同グループを含め2機関しか存在しないという。

 S0-2の軌道の観測には、ハワイマウナケア山頂に位置するW・M・ケック天文台、ジェミニ天文台、国立天文台が運営するすばる望遠鏡等の光学赤外線望遠鏡が用いられた。S0-2の観測は過去24年にわたって実施されているという。

 S0-2の軌道を明らかにし、一般相対性理論の検証に重要なデータが、天体の放つ光のスペクトルである。S0-2が放射する光は、超大質量ブラックホールの強い重力を受けている。光の波長は、天体の移動速度や超大質量ブラックホールの強力な重力から逃れるのに必要なエネルギーにも関係するという。

研究グループは、S0-2の観測データに光のスペクトルの情報を組み合わせることで、軌道の3次元構造を明らかにした。これにより、超大質量ブラックホールの強い重力下での一般相対性理論の検証が可能になったという。

 研究の成果は、米Science誌にて25日に掲載されている。(記事:角野未智・記事一覧を見る

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