【小倉正男の経済コラム】文在寅政権:言葉と感情のポピュリズムの果て
2019年7月20日 14:48
■文在寅政権の阿鼻叫喚ぶり
韓国というか、文在寅大統領というべきか、やっていることが慌てすぎというか薄っぺらで、末路は厳しいなと。
日本からのたった3品の材料・部品輸出の厳格化で国がひっくり返るような騒ぎである。個別契約ごとにチェックされ、手続きが厳格化される。禁輸されるわけではない。それなのに阿鼻叫喚の呈である。
日本からすれば、過剰な優遇を改めて正常化するにすぎない。だが、文政権は大騒ぎだ。アメリカに泣きついて何とか自分に有利に仲裁してくれと子供じみた騒ぎを演じている。 いくらアメリカでも、「自分で解決したら」と呆れるしかない。
韓国はさらに政策金利を年1.75%から1.5%に引き下げた。「今回の日本の輸出規制が拡大すれば、韓国経済に与える影響は少なくない」(韓国銀行)。株価や為替の変動に対応したとしている。
金利まで急遽下げざるをえないというのは、韓国にとって3品目の輸出厳格化の衝撃は強烈だったことを示している。この恐慌ぶりでは、株価や為替は当面は落ち着いても、中期的には資本やおカネはますます韓国から逃げ出すのではないか。とくに為替(通貨安)は火が付けば厄介なことになる。
■付ける薬がないのでは
文在寅大統領などもそうだが韓国は、「日本の3品目の輸出規制は、阿倍首相が参院選挙で勝つためのパフォーマンスだ。参院選挙が終わったら、輸出規制を引っ込める」と楽観的な見通しを持っていたようだ。いまでも文在寅大統領は、「選挙が終わればどうなるか見守りたい」と発言している。
自分ではいかにも日本を知っているような観測と思っていたようだが、お門違いもかなり相当なものである。日本の参院選挙では、韓国などまったくアジェンダになっていない。見えていないにも程がある。
問題を解決するには、その核心がどこにあるのか、情報を収集して正確に把握するのが基本。だが、核心を把握していない。お粗末である。
「韓国は日本をまったくわかっていない――」。韓国紙があまりにもまっとうな報道をしたら、文在寅政権は逆ギレで言論を統制する動きを採っている。 メディアが、せっかく冷静になれと事実に基づく記事を書いているのに「土着倭寇」とレッテル張りをしている。こうなるともう付ける薬はない。
■言葉と感情はタダだが・・・
文在寅大統領と与野党代表の会合では、野党から「言葉と感情だけでは問題の解決につながらない」「反日感情に訴え、民族主義の対応で解決する事案ではない」といった話が出た模様だ。
「瞬間湯沸かし器」――、いまどきの人にはそれ何ですかといわれるタームだが、怒ったり、恨んだり、金利まで急遽下げたりと慌ただしいが、ワアワア騒いでいることが仕事になっている。 野党も大枠でやや同じようなものだが、文在寅大統領の動きはなにひとつ問題の解決になっていない。
言葉と感情はタダだから、なんとでも使える。文在寅大統領としてはすでに自信を喪失しているのではないか。アメリカに泣きつくしかないのは己に策がないことを逆に証明している。野党まで引っ張り込んで、「愛国か売国か」と言葉と感情に走ることしかやっていない。「亡国」については、言葉と感情すらも振り向けられていない。
韓国は、日本から半導体、液晶などの製造装置、関連部品を買って製品をつくって中国などに輸出して稼いできた。経済の裾野、ファンダメンタルな産業や技術を蓄積してこなかった。
しかし、いまや中国が日本から半導体関連製造装置、部品を買って「中国製造2025」を着々と推進している。中国が日本に急に接近してきたのは「中国製造2025」を推進するためにほかならない。 中国も基礎的な産業、技術の蓄積がない。だが、とりあえず漁夫の利を生かせるわけだから、中期的には韓国が持っているマーケットを奪い取ることに虎視眈々ということになる。 文在寅大統領の政策は、一種の左派ポピュリズムなのだが、言葉と感情だけでは国民の支持は続かない。「日本に警告する――」、驚きの言葉と感情である。 言葉と感情に走れば、経済がおかしくなる。8月にホワイト国を解除されるとなれば、さて次はどのような言葉と感情を使うのだろうか・・・。
(小倉正男=「M&A資本主義」「トヨタとイトーヨーカ堂」(東洋経済新報社刊)、「日本の時短革命」「倒れない経営~クライシスマネジメントとは何か」(PHP研究所刊)など著書多数。東洋経済新報社で企業情報部長、金融証券部長、名古屋支社長などを経て経済ジャーナリスト。2012年から当「経済コラム」を担当)(情報提供:日本インタビュ新聞社=Media-IR)