一般社団法人の新設、初めて前年割れ 相続税制改正が影響
2019年7月18日 08:31
法人には社団法人という人の集まりと財団法人という財産の集まりの2種類がある。法人で最も一般的なものは社団である株式会社であろう。株式会社は1人から設立可能でその事業目的は営利事業である。これに対して一般社団法人は設立には2人の合意が必要であるが事業内容には制限がなく営利性も公益性も求められない。
旧来の民法上の社団法人は公益性が求められていたが、2006年の公益法人制度改革によって一般社団法人に制度変更され、08年より必ずしも公益性を求められなくなったとともに収益事業を行うことも可能となった。仮にこの法人が同族経営であった場合、一般社団法人では社員(理事)等が資産を法人に贈与した際には贈与税が発生するが、その後は社員の継承があっても相続税は発生しない。この為相続税逃れの温床になるのではないかとの批判があった。
そこで政府は18年より同族法人の要件を満たした場合相続税が発生することとなった。この影響か一般社団法人の設立件数は制度発足以来、増加傾向で推移してきたが税制度改正のあった18年に初めて前年割れとなっている。
9日、東京商工リサーチが「2018年一般社団法人の新設法人調査」の結果を公表した。18年に設立された「一般社団法人」の件数は5982社で前年の6387社と比べ405社減少し、率にすると6.3%と大幅な減少となり、08年の制度施行以来、初めて前年を割り込んだ。新設法人を種類別に見ると、株式会社、合同会社に次いで3番目に多くなっている。レポートでは「2018年度の税制改正で相続税などが見直され、メリットが薄まったことも影響したようだ」とコメントしている。
08年12月以降、「一般社団法人」制度の導入で公益性が必須でなくなり、任意団体などの法人化が容易になったが、このため「一般社団法人」の設立は、14年には5010社、15年には5580社、16年には5998社、17年は6387社と高い伸び率の増加傾向で推移してきた。しかも、その多くが株主の存在しない「一般社団法人」の利便性を利用した相続税逃れを目的としているともとれるスキームでの設立・運営であったとされる。
レポートでは「2018年度の税制改正により、同族の一般社団法人にも相続税などが課されることになった。相続税逃れとも受け取られかねないスキーム活用の一般社団法人の新設も、ブームの終焉を迎えたのかどうか、今後の展開が注目される」とまとめている。(編集担当:久保田雄城)