葉緑素を食べるために必要だった進化のかたち 国立科学博物館などの研究

2019年7月18日 11:22

 光合成に使われる色素「クロロフィル」(葉緑素)には実は毒がある。ただし、ほとんどの真核生物はその毒を無毒化する能力を獲得している。その事実を、国立科学博物館、福井工業大学、海洋研究開発機構、国立環境研究所、立命館大学などの研究グループが突き止めた。

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 クロロフィルには光毒性という性質がある。光と酸素が存在すると、一重項酸素という強力な酸化剤を発生させるのだが、これはあらゆる細胞の有機分子を破壊する性質を持っているのである。そこで、クロロフィルを食べるためには、この光毒性を無毒化する能力を持たなければならない。

 実際には、現在の地球上には、葉緑素を持つ光合成生物である藻類を食べている真核生物は非常に広範囲に渡って存在している。彼らは、細胞に取り込んだクロロフィルを、CPEという安全な物質に変換する能力を持っている。

 約6億年前、地球の大気や海洋が酸素で満たされるようになった頃、クロロフィルを持つ藻類は身を守る「猛毒」と光合成の活動によって大繁殖を遂げるようになった。

 18億年前から10億年前にかけて、地球には多様な真核生物が存在していたと考えられている。彼らのほとんどは絶滅してしまった(最初に生まれた真核生物も、既に滅びてしまっていると考えられている)が、その中で繁栄をものにした種があった。それが現存する真核生物すべての祖となる存在である。

 当時は日陰者だった藻類を細々と食べているに過ぎなかったかれら(真核生物の共通祖先)は、光合成生物の大繁殖とともに、クロロフィルを無毒化する能力を持たないライバルたちに圧倒的なアドバンテージをつけるようになり、我々人類を含む、多様な生物種の祖先になっていったものだと考えられるのだ。

 なお研究の詳細は、The ISME Journalに掲載されている。(記事:藤沢文太・記事一覧を見る

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