テルモ、「日本発のグローバル企業」として世界の医療への貢献を目指す

2019年7月14日 19:36

 テルモは8日、100%子会社のテルモヨーロッパ社(ベルギー)の生産設備拡張に、2,600万ユーロ(約317億円)を投資すると発表した。投資対象は製薬企業との提携で薬剤充填の受託を行う設備、心臓や下肢の血管内治療に関する製品を生産する設備などで、今後のさらなる事業拡大を見込んだ投資である。

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 テルモは1921年北里柴三郎ら医学者が発起人となり、優秀な体温計の国産化を目指して「赤線検温器株式会社」を設立したのが始まり。森下仁丹グループに所属し、1936年に仁丹体温計株式会社に商号変更、1963年にはドイツ語の体温計(テルモメーター)から株式会社仁丹テルモへ変更した。1974年森下グループから離れ、現在のテルモ株式会社になった。

 医療を通じて社会に貢献するという理念の下、日本で初めて使い切り注射針、血液バッグ、ソフトバッグ入り輸液剤などを順次発売。1980年には世界で初めてホローファイバー型人工肺を発売するなど、人々の健康に役立つ様々な製品を世界160カ国以上で提供しているテルモの動きを見ていこう。

■前期(2019年3月期)実績と今期見通し

 前期売上収益は5,995億円(前年比2%増)、営業利益は1,066億円(同2%減)。買収無形資産の償却費146億円と災害による損失、損害保険受取、事業再編費用などの一時的な損益9億円を加算した調整後営業利益は、前年よりも28億円減の1,221億円(同2%減)であった。

 調整後営業利益の減益要因は、一般管理費の増加83億円、研究開発費の増加45億円、薬価下落67億円、海外比率69%の中前年に比べて円高(1ユーロ130->128円)為替差損37億円など、計232億円であった。一方増益要因は、売上収益増加に伴う売上総利益の増加183億円とその他で21億円の計204億円であった。

 今期は売上収益6,350億円(同6%増)、営業利益1,090億円(同2%増)、調整後営業利益1,240億円(同2%増)を見込んでいる。

■中期成長戦略(2017年~2021年)による推進戦略

 2015年までの10年間で売上高、純利益ともに2.1倍の成長を受けて、次の10年を見据えた成長戦略を推進する。

 1.グローバル経営体制への移行
 ・8事業のうち海外比率の高い4事業で海外本部、現地トップ体制の確立: 心臓血管カンパニーのニューロバスキュラー事業(前期海外比率92%)が米国本部、CV事業(同78%)が米国本部、血管事業(同90%)が欧州本部、血液システムカンパニー(同88%)が米国本部体制となっている。

 2.グローバルオペレーションの強化
 ・生産体制最適化: グローバル本社として国と事業の壁を越える権限を持つ生産、オペレーションのチーフオフィサーを新設して、世界31工場のコラボレーションと生産の現地化を推進。

 3.イノベーションの推進
 ・社会的インパクトの大きい未来医療開発: 米国カリフォルニアWWイノベーションセンター開設と米国西海岸のアーリーステージR&D拠点拡充。

 ・コア技術の進化、新技術の獲得: 癒着防止のアドスプレー開発、心不全遠隔モニタリング機器開発、再生医療と免疫治療に関する製剤プロセス開発。

 4.日本市場での成長策の進展
 ・ホスピタル市場の強化: ホスピタルカンパニーの日本での前期売上高比率は77%で、医療現場のニーズに応える疼痛緩和、ICU管理、麻酔管理などソリューションの提供。

 「日本発のグローバル企業」として、世界の医療に大きく貢献することを目指すテルモの動きに注目したい。(記事:市浩只義・記事一覧を見る

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