太陽系の小惑星が大きく場所を移動している事を初めて実証 茨城大などの研究
2019年7月3日 07:05
太陽系の小惑星は、火星と木星の公転軌道の間にある小惑星帯に集中している。それらの小惑星の一部は、もともと外惑星領域(木星の公転軌道よりも外の領域)において形成されたが、惑星の重力によって現在の軌道に運ばれてきたのではないかと考えられてきた。だがその証拠は、乏しかった。今回、茨城大学などの国際研究グループは、地球に落下した隕石の分析から、この事実を立証することに成功した。
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研究に参加しているのは、茨城大学理学部の藤谷渉助教、マックス・プランク化学研究所(ドイツ)のペーター・ホッペシニアリサーチサイエンティスト、海洋研究開発機構(JAMSTEC)高知コア研究所の牛久保孝行技術研究員、東京大学大気海洋研究所の佐野有司教授ら。
太陽系が現在の姿になるまでの過程については謎が多い。各惑星の軌道が46億年前から今の状態だったのか、それとも重力によって軌道を変化させていったのか、などといったこともその一つである。
その関連として、火星と木星の軌道の間にあるメインベルト小惑星・木星軌道上のトロヤ群小惑星などは、外惑星領域で形成され、木星型惑星(地球型惑星に対置される概念で、太陽系においては木星、土星、天王星、海王星のこと)の軌道の変化によって、現在の位置に移動したのではないかと考えられている。
今回の研究では、2000年にカナダで発見されたタギシュ・レイク隕石の化学的分析が行われた。この隕石は、D型小惑星と呼ばれるタイプの小惑星から飛来したと考えられ、そのような小惑星はメインベルト外縁やトロヤ群小惑星に多い。
理論的に考えると、約40億年前に木星型惑星の軌道が変化したとすると、太陽系外縁天体がそこに移動したと考えられる。
タギシュ・レイク隕石の分析結果はそれを肯定するものだった。この隕石はドライアイスが存在するほどの低温環境下で生成されたと考えられるのだが、そのような環境は太陽から遠い木星軌道以遠でなければならないからである。
研究の詳細は、Nature Astronomyに掲載されている。(記事:藤沢文太・記事一覧を見る)