木星や土星とは異なる天王星の環 アルマ望遠鏡が様相を明らかに
2019年7月2日 06:28
可視光線では検出の難しい天王星の環。米カリフォルニア大学バークレー校などから構成される研究グループによって、天王星の環が氷の岩から構成されていることが判明した。国立天文台が運営するアルマ望遠鏡と欧州南天天文台のVLT(Very Large Telescope)が今回の発見に貢献したという。
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■観測が困難な天王星の環
天王星は太陽からの距離が、地球と太陽との距離の約19倍と離れた位置に存在するため、環の存在が発見されたのは1977年と比較的最近だ。1986年にボイジャー2号が天王星通過時に環の観測に成功したものの、温度などその詳細までは明らかにできなかった。巨大な望遠鏡でなければ天王星の環が確認されないため、その詳細については多くの謎が残る。
研究グループは、南米チリにある2つの望遠鏡で天王星の環の観測を実施した。アルマ望遠鏡は波長数ミリメートルのミリ波やさらに波長の短いサブミリ波を観測できる干渉計により、低温のガスや塵から放射される電波を観測できる。またVLTは、紫外線から赤外線までの波長の電磁波を観測できる干渉計だ。
研究グループは今回、2つの望遠鏡に活用して初めて天王星の環の温度を計測した。その結果、環の温度がマイナス196度に及ぶことが判明した。この温度は液体窒素の沸点と同じだという。
また「イプシロン環」と呼ばれる天王星で最も明るく高密度の環の性質も判明した。それによると、天王星の主要な環は氷の岩から構成されるものの、土星や木星の環のように塵やガスが確認されなかった。イプシロン環の場合、ゴルフボール程、あるいはそれより大きな岩から構成されているという。この観測結果は、ボイジャー2号による撮影を再確認したことになる。
■塵やガスが環から発見されない謎
天王星の環の起源として、重力によって捕らえられた小惑星、衝突による衛星の残滓、あるいは惑星形成時に残った破片などいくつかの説が存在する。その一方でイプシロン環に塵やガスが存在しない原因は明らかでない。
「天体か何かが、環を構成する塵やガスを一掃したのか、吸収したと考えられるが、われわれには分からない」と、研究グループのひとりである同大学大学院生のエドワード・モルター氏は答えている。
今後は、米航空宇宙局(NASA)が2021年に打ち上げ予定のジェームズ・ウェッブ宇宙望遠鏡の分光技術により、天王星の環の構成要素が判明するだろうという。
研究の成果は、米天文学誌Astronomical Journalにて掲載される予定だ。(記事:角野未智・記事一覧を見る)