神大、銀河宇宙線が気候に影響を及ぼす「スベンスマルク効果」の存在を立証
2019年6月30日 16:20
銀河宇宙線というのは、太陽系外からやってくる高エネルギー荷電粒子である。これが地球にぶつかるときに下層雲の発生を生起するという説があり、これを「スベンスマルク効果」という。
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従来スベンスマルク効果は仮説に過ぎず、実証的証拠がなかったのだが、今回神戸大学内海域環境教育研究センターの兵頭政幸教授らの研究グループは、78万年前に起きた地球の地磁気逆転の途中に、銀河宇宙線が地球に気候変動をもたらした証拠を発見した。
地磁気逆転というのは、地球のN磁極とS磁極が逆転する現象のことである。最後の地磁気逆転が起こったのは78万年ほど昔のことである。それ以前にも地球の地磁気は何度も逆転していることが分かっているのだが、それが何故なのかは不明である。とはいえ、それは今回の研究とは別の問題になる。
スベンスマルク効果は何故これまで立証できなかったか。銀河宇宙線の量も、地球上の雲の量も、この問題を考える上では微小な変化しか起こさず、気候への影響に関する明確な証拠が得られなかったからである。
今回の研究で着目したのは、黄砂である。過去260万年に渡り、吹く風によって黄色い砂がゴビ砂漠のすぐ南の中国黄土高原に降り注いでいるわけだが、78万年前の約5,000年間における砂塵の粒度と堆積速度を調査したところ、通常よりも粒度が荒くなり、堆積速度が3倍以上も増加していたことが分かった。ここから、冬の季節風が強化されていたことが分かる。
そして、銀河宇宙線が地磁気逆転の影響で50%以上増加していた期間とこれが一致するため、銀河宇宙線の増加によってスベンスマルク効果が生じ下層雲が増加、シベリア高気圧が強化し、雲の日傘効果をもたらしたことがこれによりほぼ証明されるのである。
研究の詳細は、Scientific Reports電子版に掲載されている。(記事:藤沢文太・記事一覧を見る)