ポリフェノール摂取がアルツハイマー予防につながるメカニズムを解明 東大ら
2019年6月19日 22:07
東京大学、金沢大学、福島大学などの研究グループは、マウスを用いて、ポリフェノールの一種であるロスマリン酸の摂食が、アルツハイマー病の主病態となる脳内のアミロイドベータの凝集を抑制することを発見した。ポリフェノール摂取により、アルツハイマー病の予防につながる可能性を新たに見いだしたことになる。
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アルツハイマー病は、脳内にアミロイドベータの凝集体等が蓄積して、神経細胞を死滅させ、記憶や認知力の低下を引き起こす。これまで、アルツハイマー病の治療薬は開発されておらず、症状の進行を緩和する対症療法がとられているに過ぎなかった。そのためアルツハイマー病の治療、予防に繋がる脳内メカニズムの発見が急務となっていた。
研究グループでは、これまで、アルツハイマー病を発症するモデルマウスを用いて、ロスマリン酸の摂取が、アミロイドベータの凝集を抑制することを明らかにしてきた。ロスマリン酸は、試験管レベルでアミロイドベータの凝集を抑制することは確認されている。しかし、摂取されたロスマリン酸の脳内への移行割合が低く、脳内でのアミロイドベータの凝集抑制メカニズムはわかっていなかった。
今回の研究では、ロスマリン酸を摂取したことでアミロイドベータの凝集が抑制されたアルツハイマー病モデルマウスの脳を、DNAマイクロアレイを用いて網羅的遺伝子発現解析を行ったところ、ドーパミン作動性シナプス経路の活性化が抑制に寄与していることを発見した。アルツハイマー病患者の脳内では、ドーパミンが減少するが、ドーパミン神経伝達を改善することで、認知機能障害の進行が抑制される。
ロスマリン酸の摂食により産生されるドーパミン等の4種のモノアミンすべてが、アミロイドベータの凝集を抑制することも、実験的に確認された。
今回の研究は、ポリフェノールの摂取がアルツハイマー病への予防につながる可能性を科学的に証明したことになり、今後の予防研究への寄与が期待される。