訪日インバウンド戦略 自治体はヒト・カネ・情報の全て不足
2019年6月19日 09:32
政府は人口減少による内需の底支え政策の一環としてインバウンド(訪日客引き込み)政策を推し進めている。インバウンドは周知のとおりビザ緩和や各種法制、補助事業の整備など政策のインフラ部分を担当しているのは政府であるが、各観光スポットへの引き込み戦略は自治体自身による戦略立案が必要だ。
インバウンド政策はマクロには計画を上回る実績で推移しているものの、訪日客の訪問先が東京、大阪、京都など大都市圏に集中しており地方創生との関わりからも訪日客をより地方へ誘導したいとの思惑が政府にも自治体にもある。その意味からも自治体による政策の立案と実行は重要な要素を占めている。
これに関連し、矢野経済研究所が全国47都道府県および全国20政令市のインバウンド誘致に関するアンケート調査を今年2月から3月にかけて実施し、12日にその集計結果をレポートとして公表している。
今回調査では「インバウンド誘致に関して各地方自治体が現状抱えている組織的な課題」について自治体担当者に複数回答で答えてもらっている。これによれば、「「人員規模」と答えた自治体が69.0%と最も多く、次いで「専門的な知識・スキル」の64.3%、「予算規模」61.9%、「地域内の観光関連の連携」59.5%などが約6割を超えている。
特に「人員規模」への回答は約7割にも達し人員の増強が一番の課題であるようだ。また、2番目には「専門的な知識・スキル」が6割を超えて指摘されているが、インバウンド政策には従来の行政政策の立案とは異なった国際感覚等の幅広いマーケティング知識が必要となるからであろう。既に民間企業と連携しながら訪日客行動のビッグデータ分析や人気ユーチューバーを活用したインフルエンサーマーケティングを実施している自治体も少なくない。
経営資源はヒト・モノ・カネ・情報と言われるが、日本にはモノにあたる観光資源は比較的豊富であるせいか、課題に関する回答を見る限り不足しているのは「ヒト(人員)」と「情報(専門知識とスキル)」であり、それを支える「カネ(予算)」であるようだ。
インバウンド政策はマクロとしては成功している。課題は東京・大阪・京都に集中する訪日客をどのように地方へと引き込み分散し地方経済を活性化させるかだ。さらに客単価向上の問題もあり、単に人員増加だけでなく富裕層という顧客の属性にも考慮した政策の立案が必要だ。自治体が持つ「モノ(観光資源)」をどのように運用するか、この複雑で困難なマーケティング戦略の主体は自治体自身である。(編集担当:久保田雄城)