ダークマターの新たな発見手法 誕生直後の恒星取り巻く塵に着目 東北大など
2019年6月5日 18:13
東北大学は4日、ダークマター(暗黒物質)の候補となる素粒子アクシオンの新しい発見手法を発表した。原始惑星系円盤が放射する光の偏光パターンから、アクシオンを探索できるという。
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■仮想上の物質ダークマターの正体
ダークマターは宇宙に存在すると考えられている仮想上の物質だ。銀河を構成する星が離散せず形をとどめる原因を、光を放射しない物質の重力効果に求めたのが、ダークマター説のはじまりである。
1930年代初頭に提唱されたダークマターだが、この正体は現代でも判明していない。ダークマターの候補のひとつが、「アクシオン」と呼ばれる未発見の素粒子である。ひも理論などの高いエネルギー理論から存在が予見されるアクシオンは、これまで発見された素粒子よりもずっと軽く、光の伝播に影響を与えると予想される。
これまで太陽から飛来するアクシオンを地上で捕まえる実験や、人工的に生成させて検出する実験が実施されたものの、発見には結びついていない。
■光の偏光パターンを変えるアクシオン
今回、京都大学や東北大学から構成される研究グループが着目したのは、原始惑星系円盤である。誕生したばかりの恒星の周りには、ガスや塵からなる円盤が存在し、これが将来惑星へと進化する。
この原始惑星系円盤が放射する光は、綺麗な同心円状の偏光パターンをもつ。アクシオンには光の偏向方向を回転させる性質があると予想されるため、アクシオンがダークマターだと仮定すれば、同心円状の偏光パターンが渦巻き状へと乱されるという。研究グループはこの予想にもとづき、原始惑星系円盤の偏光パターンの乱れを探すことで、アクシオンの発見を試みた。
研究グループは、すばる望遠鏡が取得した原始惑星系円盤の観測データに着目。偏光パターンは見出せなかったものの、アクシオンの観測に対してこれまでにない制限がつけられたとしており、今後最新の望遠鏡を用いて原始惑星系円盤の偏光観測を実施することで、アクシオンが発見されダークマターの正体解明が期待されるとしている。
研究の詳細は、米物理学誌Physical Review Lettersにて5月14日付で掲載されている。(記事:角野未智・記事一覧を見る)