すばる望遠鏡、半年で1800個の超新星発見 宇宙の加速膨張解明へ 国立天文台

2019年6月1日 11:19

 国立天文台は5月30日、東京大学などと共同で、すばる望遠鏡を用いて約1,800個もの超新星を短期間で発見したことを報告した。発見された超新星には遠方にある天体も含まれ、宇宙膨張の仕組みが明らかになることが期待される。

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■広範囲で観測可能なすばる望遠鏡のHSC
 ハワイ・マウナケア山頂に建設されたすばる望遠鏡は、口径8.2メートルの赤外線望遠鏡だ。搭載されている超広視野主焦点カメラ(HSC)は、満月9個分に及ぶ範囲の天域であっても一度に撮影できる。以前から搭載されていたシュプリーム・カムでは満月よりやや広い視野が撮影可能だったが、2012年に始動したHSCにより、遠方の暗い天体まで観測が可能になった。

 研究グループはHSCを用いて半年間の観測を続けた結果、約1,800個もの超新星を発見した。超新星爆発は恒星の終末期に起こる大爆発で、太陽の10億倍以上もの明るさで光り輝く。今回発見された超新星のタイプを判別したところ、約400個がIa型超新星の可能性が高いことが判明した。

■Ia型超新星から宇宙の加速膨張の仕組みが明らかに
 白色矮星の爆発によって起きるIa型超新星は絶対的な明るさが一定のため、超新星までの距離を測定可能である。重力より波長が伸びる「赤方偏移」が明らかになった129個のIa型超新星を調べたところ、80億光年彼方に存在することが判明した。この量はハッブル宇宙望遠鏡が過去10年間に発見した50個のIa型超新星を大きく上回る。

 Ia型超新星は、宇宙の加速膨張の仕組みを知るうえで重要な情報となる。Ia型超新星の観測によって、宇宙の加速膨張が1998年に発見された。この発見に貢献した3人の科学者に対し、2011年ノーベル物理学賞が贈られた。

 宇宙の加速膨張は仮説上の「ダークエネルギー」が原因だという見方が、現代の主流だ。研究グループは今後、今回発見されたIa型超新星のデータを使い、宇宙の膨張速度のより正確な値を導き出し、ダークエネルギーの時間変化を調べるとしている。

 研究の詳細は、天文学誌Publications of the Astronomical Society of Japanにて30日に掲載されている。(記事:角野未智・記事一覧を見る

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