消費者向け電子商取引が急拡大 中国からの越境EC拡大
2019年5月31日 09:24
日本は既に人口減少社会だ。人口が減少すると言うことは消費者の数も減少するということを意味する。実際に様々な業種で顧客の緩やかな減少が問題視されている。駅前商店街がシャッター商店街などと呼ばれ始めたのは随分昔の話だが、実店舗での顧客の減少は著しいものがある。
インターネットやスマホの普及によって多くの商店が顧客をECサイトに奪われていることは周知の事実だ。しかし、ECサイトでの購入、つまり電子商取引の普及は悪いことばかりではない。人口減少によって国内の顧客は減少する一方であるが、またEC購入の増大は海外に住む消費者を自店の顧客として引き込むことも出来る。
5月16日、経済産業省が「電子商取引に関する市場調査」の結果を公表している。この報告書は、日本の電子商取引市場の実態及び日米中3か国間の越境電子商取引の市場動向について調査したものだ。
報告書によれば、2018年の日本国内のBtoC-EC(消費者向け電子商取引)の市場規模は18.0兆円で前年16.5兆円と比較すると8.96%の増加と取引規模を拡大している。分野別にみると、物販系分野の対前年増加率は8.12%、サービス系分野が同11.59%となっており、この2分野が市場の牽引役となっている。
スマートフォンで用いるオークションアプリであるフリマアプリの市場規模は6392億円と前年比32.2%増加で急増しており、このアプリが初めて登場した12年からたった6年で巨大な市場に成長している。
また、海外との取引を見ると、日本・米国・中国の3か国間における越境ECの市場規模は、いずれの国の間でも増加しており、特に中国国内に居住する消費者の日本のECサイトからの越境EC購入額は1兆5345億円で前年比18.2%の極めて高い伸び率で増加している。一方、米国事業者からの越境EC購入額は前年比18.5%増の1兆7278億円であり、こちらも大きな伸び率を示している。近年では中国に居住する消費者や他のアジア諸国消費者による越境EC購入額の拡大が目立っている。
日本は少子高齢化の人口減少社会だ。国内に居住する消費者の減少で内需が先細っていくことは確実だ。しかし、越境ECサイトへの業態替えを適切に行えば小売レベルにおいても需要縮小が必然になるわけではない。インバウンドは観光客の引き込みだけではない。海外に居住する消費者を取り込む電子商取引を上手く活用し総需要の維持を図っていくことが重要だ。(編集担当:久保田雄城)