世界の副業事情 (2) イギリス編
2019年5月26日 16:27
ブレグジットで揺れるイギリスだが、日本ではイギリスの働き方や副業の話題は少ないように感じる。同じ英語圏のアメリカと比べ、イギリスの副業と働き方にはどのような違いがあるのだろうか。世界の副業事情を知ることで、今後の働き方へのヒントを得たい。
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■驚くのは副業人口の少なさ
イギリス国家統計局の調べでは、イギリスにおける副業人口は、約111万人(2019年3月時点)。これは、労働人口全体の4%に満たない。OECDの調査によれば、2017年のイギリスのパートタイム労働者の割合は、全体の23.6%だ。
副業人口の内、半数以上は女性で占められている。職種は、専門職と、スキルが必要とされないパートタイム職に二分される。
イギリスの最低賃金は、今年4月から8.21ポンドに引き上げられ、日本円でおよそ1,140円だ。これに対し、日本の最低賃金は、最も高い東京で958円、最も低い鹿児島で761円(2018年度)であり、大きな差がある。
イギリスでは、社会保障や福祉が手厚く、同時に税金も高い。消費税は20%だが、生活必需品には軽減税率やゼロ税率が適用されており、所得税も低所得者と高齢者は優遇されている。社会的弱者への配慮がなされているのが特徴だが、近年では予算捻出のために、こうしたサポートは抑制的になってきている。
■イギリス人の働き方とキャリアデザイン
”働く”ということ自体は、イギリス人にとっても重要なことに変わりない。しかし彼らは、同じくらいかそれ以上に、プライベートも大切にしている。
フルタイムの労働時間は8時間で、1時間の昼休みがある。しかしほとんどの場合、残業がない。パブを除けば、店も夜には閉まってしまう。プライベートを優先させたり大切にすることは、社会全体で理解されている。当然、仕事の能力と責任は伴う。
キャリアデザインについては、アメリカともまた異なる。イギリスで重視されるのは、コツコツと積み上げてきた実績と能力だ。小さい会社からスタートし、転職を繰り返して理想のキャリアへと近づける。アメリカと同様に、終身雇用はない。
だが移民の増加によって、状況も変わってきている。ブレグジット問題も、移民から雇用を守ると主張する人々によって始まった。イギリスの働き方や副業事情も、移民とブレグジットの結果に影響されることは避けられないだろう。(記事:西島武・記事一覧を見る)