識字率からみる教育水準 発展途上国の教育問題、原因は戦争や貧困

2019年5月19日 22:09

 日本の識字率は99.8%と言われる。100%には至っていないが、0.2%は知的障害や言語障害をもつ場合であるという。識字率がほぼ100%になるということには、義務教育を実際に受けられる割合の高さだけでない理由がある。社会的差別や貧困問題が識字率に反映されるほど深刻な状況ではないということを表している。

 世界の成人の6人に1人は読み書きができない。識字率は15歳以上の人口に対して「日常生活で必要な文章を理解して読み書きできる」かどうかをもとに算出する。ノルウェーやフィンランドなど識字率100%という国がある一方で、アフガニスタンや南スーダンなどの識字率は30%以下なのである。言いかえると、人口の70%が「非識字者」であり、読み書きや計算といったことに対して日常に支障が出るということだ。

 これらの国のほとんどは、戦争や貧困問題が課題とされ、性別による社会的差別が強く根付いている。識字率は戦争、貧困、差別によって低下する傾向がある数値である。戦争や紛争が続けば文字を学ぶための施設が破壊されるだけでなく、その日を生きることだけで精一杯の状態になる。貧困の状態にあっても同様で、その日のために働くことが優先される。宗教的な事情などで女性が勉強することをネガティブに考える場合もある。

 識字率の問題には、少数民族の問題も含まれる。少数民族の言葉を話せる教師がいないなど、非識字者に対して公用語を教えるための環境が整っていないということがあるのだ。また、学校などの教育施設があったとしても立地による交通手段の問題でそこに通うことができないということもあるという。

 母親の識字率が高くなると5歳未満の子どもの死亡率が低下するというデータもあり、識字率の問題というのは連鎖するものでもある。識字率を語るときに頻出するもののなかには、母親が薬の説明を読むことができず子どもに誤った服用をさせてしまうという例がある。悲惨なエピソードのひとつであるが、文字を読むことができなければ確実に起こり得る。

 識字率をめぐる問題は根深く、教育水準や教育に対する意識が変わらない限りは負の連鎖を生む。識字率の低い地域に学校をつくったり教育者を派遣したりするだけでは解決できないことも多く、長期的かつ広い視野でとらえる必要のある問題である。(編集担当:久保田雄城)

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