中国の月面探査ミッション 月の裏側に潜む謎に挑戦

2019年5月17日 08:32

 中国では、2007年以降精力的に月面の無人探査に挑戦してきた。その探査機は中国の月の女神にちなんでChang'e(嫦娥)と命名されており、今回のミッションはその4号機にあたる。Chang'e4は、2018年12月7日に打ち上げられ、2019年1月3日に中国としては初めて月の裏側への着陸に成功している。

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 この一連のミッションの第1号機であるChang'e1は2007年に打ち上げられた月面無人周回機で人類に最も精密な月面3Dマップをもたらした。2号機のChang'e2は2010年に打ち上げられ、Chang'e1よりもさらに月面に接近する軌道(月面から100km)を周回し、より高解像度の月面画像をもたらした。このミッションは次の段階である月面着陸に備えて、着陸地点の詳細な地形情報を得ることが主な目的であった。

3号機であるChang'e3により、中国は2013年12月14日、世界で3番目の月面着陸を成功させた国となった。これは旧ソ連が1976年にLuna24を月面に着陸させて以来実に27年ぶりの出来事であった。

 今回のChang'e4はそれまでのミッションで蓄積した経験と技術を活かして初めて月の裏側への着陸に成功し、太陽系で最大級のクレーター(直径約2,500km、深さ約13km)である南極エイトケン盆地の探査を行い、月の進化のプロセス解明に挑んだ。

 この大きなクレーターを探査の対象に選んだ理由は、クレーター生成時に衝突した小惑星が月面の内部にまでわたって、より深くくさびを打ち込む形で、損傷を与え溶融させたと考えられているからである。そこを探索すれば月面内部のマントル物質の発見が期待できる。

 現時点ではデータ採集および解析の最中にあり、主にカンラン石と輝石の組成の分析結果が明らかにされている。この組成の違いを見出すことで月の生成過程が推定できる。今後、マントル物質のさらに詳細な分析によって月面の地形の形成過程がより明確になるはずである。また月面では、侵食や風化がないため、表面が形成された当時のままの状態が保たれており、地球の進化の初期段階を推定するのにも役立つかもしれない。

 なお余談ながら、アメリカの探査機クレメンタインによる探査では月面の表側と裏側ではトリウムの集積量に大きな差があることが判明している。現在のところ月面の裏側にある南極エイトケン盆地ができた際の小惑星衝突のほうが先に起こり、表側にある雨の海や嵐の大洋ができた原因となった小惑星の衝突があとから起きたのではないかと推定されている。

 中国の月面探査ミッションにはまだ続きがあり、5号機、6号機までが計画されている。またその先には2030年代に月面南極点近くに前哨基地を建設することまでが視野に入れられており、中国の月面探査活動から当分目が離せそうにない。(記事:cedar3・記事一覧を見る

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