手のひらサイズの超小型宇宙船 隣の恒星系までたった20年で飛行 米大学の研究

2019年5月14日 20:06

 地球から太陽系外惑星までの距離は、最も近い「プロキシマb」でも約4.2光年彼方にあるため、われわれが上陸するのは不可能に近い。だが「ウエハークラフト」と呼ばれる超小型宇宙船を使えば、たった20年でたどり着くことが可能という。

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 米カリフォルニア大サンタバーバラ校は7日、ウエハークラフトによる初めての宇宙飛行計画を立ち上げたことを発表した。

■スティーブン・ホーキング博士も参加した計画

 ウエハークラフトのような超小型宇宙船を飛行させる計画は、2016年4月にニューヨークで発足した「ブレイクスルー・スターショット」と呼ばれるプロジェクトに端を発する。ブレイクスルー・スターショットの目的は、太陽系に近接した恒星系ケンタウルス座アルファ星まで宇宙船を飛ばすことだ。露投資家のユーリ・ミルナー氏が立ち上げたこのプロジェクトには、宇宙物理学者の故スティーブン・ホーキング博士やフェイスブックのCEOであるマーク・ザッカーバーグ氏も支持を表明している。

 プロキシマbは、地球に最も近接した恒星「プロキシマ・ケンタウリ」の周りを公転する惑星だ。このプロキシマ・ケンタウリと連星を構成している天体こそが、ブレイクスルー・スターショットがターゲットにするケンタウルス座アルファ星である。

■地球からのレーザーにより光速の20%のスピードを実現

 米カリフォルニア大サンタバーバラ校のフィリップ・ルビン教授率いる研究グループが、ケンタウルス座アルファ星まで飛行させようと計画している超小型宇宙船が、「ウエハークラフト」である。手のひらサイズしかないウエハークラフトの推力は、地球から照射するレーザーである。これにより光の速度の約20%で航行でき、ケンタウルス座アルファ星までたった20年で到達する。

 この超小型宇宙船はガム板ほどの重さにもかかわらず、撮像やデータ転送、レーザーの送受信、高度の決定、磁場の検出に至るまで、多くの機能が搭載されている。ウエハークラフトの試作品はすでに完成し、ペンシルベニア州上空の成層圏まで打ち上げられた。この試作品は、飛行中に4,000枚以上もの画像の撮影にも成功している。

■ウエハークラフトに立ちはだかる問題

 地球上では飛行に成功したウエハークラフトだが、実際に宇宙へ飛ばすためには大きな困難が立ちはだかる。放射線と高い電荷に帯びた粒子で満たされている宇宙空間では、現状ではウエハークラフトは耐えられないのだ。

 だが近年のフォトニクスやシリコンテクノロジーの発達により、このような技術は実現可能なはずだという。研究グループは、火星や小惑星帯といった地球に近い天体を探索できるウエハークラフトの製作を短期的な目標として掲げている。(記事:角野未智・記事一覧を見る

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