キャッシュレス決済に新規参入相次ぐ(3-2) 加盟店が良く分からない!
2019年5月9日 17:34
遅れていた「キャッシュレス決済」の花が日本でようやく開花しつつあるが、利用者の立場で言わせてもらえば、「今、支払いをしようとしているレジで、自分の加盟している決済サービスが利用できるかどうかが分かり難い」という、最大のアキレス腱が克服されていない。
【前回は】キャッシュレス決済に新規参入相次ぐ(3-1) 「ゆうちょPay」始まる
店によっては利用できるサービスやカード等を一覧にして表示しているところもある。利用する方も見慣れていないため、探すのをあきらめて「使えるかどうか」をレジで確認すると、ワンテンポかツーテンポ遅れて「利用が可能かどうか」返答がある。利用できない場合には、次の候補を口にするのに躊躇して、今まで通りの現金決済になってしまう人だっているだろう。
利用が可能かどうか、事前に確認する手があるのはもちろんだが、高額商品でもない限り事前にそんな準備はできない。消費行動というのは、行き当たりばったりに醍醐味がある。あらかじめ決めたところばかりで買い物をするのは義務みたいなもので、ショッピングの楽しさとは無縁の行為ではないだろうか?
キャッシュレス決済事業者ごとに、Googleで「〇〇の使える店」と検索してみた。検索結果は様々だが、概ね銀行系の検索結果は残念な状況である。「カミングスーン」というのもあれば、サービス内容の説明ウエイトが多くて使える店がなかなか見えてこないのもあった。IT・通信系の場合は、ロゴマークがまとめて表示されるものや、ジャンルごととかあいうえお順を併用して工夫を感じさせる業者もあるが、正直に言えばどの業者も似たり寄ったり感が拭えない。
キャッシュレスサービスが先行している中国では「Tencent(テンセント)」の「WeChatPay(ウィチャットペイ)」と、「Alibaba(アリババ)」の「Alipay(アリペイ)」に大きく集約され、スマホ利用が基本である。
中国で爆発的にキャッシュレスサービスが普及した理由は様々な面から説明されているが、大きなウエイトを占めているのは二者択一の分かり易さにあるのではないか。おまけに、ウィチャットは名前通りチャットサービスの運営会社であるテンセントの商品で、アリペイはECサービスの運営会社であるアリババの商品だ。
少ない選択肢を評価している訳ではないが、マーケットの急速な拡大に事業者の対応が追い付かず、結果としてごく限られた事業者にサービスが集中したことが、奏功したようだ。日本の場合は、物販事業が成熟している上に、事業参入障壁が低いため、数多くの事業者がキャッシュレス決済事業へ進出している。適切な競争状態が確保されている健全な事業環境が、皮肉なことに馴染みにくくて分かり難い現在の状況を生み出した。
今のままでも一部の利用は増加するだろうが、社会全体でキャッシュレス決済の利用が大幅に増加することは期待し難い。キャッシュレス決済事業者の連携や利用方法の共通化が進まなければ、利用者が戸惑うのはもちろんのこと、レジの対応も難しくなってしまう。(記事:矢牧滋夫・記事一覧を見る)