日清紡、団結力強化と事業ポートフォリオの見直しで企業価値向上を目指す

2019年5月4日 10:30

 日清紡ホールディングスは4月26日、富士通子会社のFDK社から電動車用電源部品事業の一部を譲り受けると発表した。

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 日清紡は「環境・エネルギーカンパニー」グループとして、モビリティ分野において自動車用ブレーキ摩擦材、ETC車載機やGPS受信機、車載用半導体などのほか、ハイブリッド車をはじめとする電動車用コイル、トランスなどの部品事業を展開。今回のFDK社からの譲受対象事業であるコイル、トランス製品およびこれらの材料となる高機能磁性素材(フェライト)との補完効果が期待できる。

 日清紡は高級綿糸の大量生産を行う紡績会社として、1907年財界有力者らにより設立された。戦前は繊維中心に事業を行ってきたが、戦後高度成長の流れの中でブレーキ、化学品といった非繊維部門の事業を拡大し、2000年には繊維35%、ブレーキ22%、不動産2%、その他41%の売上高構成比となった。

 2010年に日本無線を子会社化したことなどにより、前期には繊維10%、ブレーキ32%、エレクトロニクス35%、精密機器15%、化学品2%、不動産1%、その他5%と大きく事業ポートフォリオの組み換えを進めている日清紡の最近の動きを見ていこう。

■前期(2018年12月期)実績

 前期は決算月を3月から12月に変更したことに伴い、4-12月の9カ月変則決算となっている。前期売上高は4,162億円(前年比1%増)で、営業利益は前年よりも103億円悪化して25億円の赤字となった。

 営業利益悪化の要因としては、子会社TMD社の不振と米国、中国、タイでの減益によりブレーキ事業で70億円、マリンシステムと大型防災システムが低調で無線通信が悪化したエレクトロニクス事業で13億円、それぞれ前年から減益。また川越事業所跡地の宅地分譲が終了した反動で不動産事業が10億円、海外向け糸とアパレル衣料品の不振で繊維事業が6億円、商社機能や保険代理店などその他事業で6億円、減価償却費増加の影響で精密機器事業が1億円それぞれ減益となった。

 一方、化学品事業は高付加価値品の比率向上により前年よりも3億円の増益であった。

■今期(2019年12月期)見通しと今後の推進戦略

 今期見通し作成にあたって、前期実績に2018年1-3月の実績を加算して調整後前年実績を算出。売上高は5,400億円(同5%増)、営業利益はエレクトロニクス事業とブレーキ事業の大幅改善により前年よりも32億円増の80億円(同67%増)を見込む。

 事業多様性の中で団結力強化と事業ポートフォリオの見直し継続で企業価値を高める次の戦略を推進する。

1.ブレーキ事業
 ・TMD社: 日清紡主導で経営体制を刷新し、利益重視の構造改革推進。
 ・ブレーキ事業全体: 環境負荷の低い銅フリー摩擦材の受注拡大とグローバル市場での地位確立。

2.エレクトロニクス事業
 ・マリンシステム: 新造船、情報サービスなどの基盤分野を強化し、自動化運行への取り組み強化。
 ・通信機器: オートモーティブと鉄道事業の拡大。
 ・ソリューション: 防災関連など官公需の拡大と気象、防災、海洋交通ビジネスの海外への拡大。
 ・電子デバイス: 車載、産業機器分野など成長市場の拡大と2018年に連結子会社化したリコー電子デバイスと新日本無線のシナジー追求。
 ・マイクロ波: 衛星通信向け事業拡大。

 技術と事業の分化・融合の繰り返しにより、事業ポートフォリオを大きく変化させてきた日清紡の動きから目が離せない。(記事:市浩只義・記事一覧を見る

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