働き方改革における高齢者の就業促進と70歳超の年金受給開始の狙いは?

2019年4月29日 19:43

 政府の働き方改革の中で高齢者の就業促進が提言されている。元気で働く意欲がある高齢者の働く環境の整備は重要だ。一方で安倍首相は、昨年10月の未来投資会議(首相官邸主催)にて、現行の65歳までの継続雇用義務付けを70歳まで引き上げる際の仕組みづくりにつき、今年夏までに結論をまとめ速やかに法改正するよう関係閣僚に指示した。(共同通信社2018.10.22)

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 また、昨年9月の自民党総裁選の討論会で、現在の年金受給が60~70歳の間で受け取れる時期を、70歳を超えてからでも受け取れる制度改正を提案し3年以内の実現に言及した。

 安倍首相は現行の公的年金支給年齢の原則65歳は維持するとしているが、政府・厚生労働省では70歳までの就業促進と年金支給年齢をセットで検討される可能性がある。年金支給と継続雇用がセットで検討されると、現在の継続雇用制度のさらなる延長となり、企業に年金財政悪化のしわ寄せを行う危険性になり要注意だ。

●現行の継続雇用制度

 2013年4月施行の「高年齢者等の雇用の安定等に関する法律」によって、企業は定年の引き上げ、継続雇用制度の導入、定年制度の廃止のいずれかによって、希望する社員の65歳までの雇用確保が義務付けられた。年金支給年齢の65歳への繰り上げで、60歳定年から65歳年金支給までの収入空白の5年間を生まないため、企業にツケを回した形だ。

 多くの企業が導入しているのは継続雇用制度だ。70歳までの就業促進+企業の継続雇用義務が、70歳からの年金支給繰り上げに連動させられれば継続雇用の再延長になってしまう。

●働く意欲のある高齢者の就業促進は重要

 年金支給が原則65歳からとなり、高齢者雇用では65歳までの年齢制限求人が多くなっている。事実上の年齢差別が一般化している。このような現状を変え、70歳までや70歳を超えてでも働ける環境づくりは重要だ。

 政府の「働き方改革実行計画」(2018.3.28)でも触れられているが、多様な技術・経験を有するシニア層が、年齢に関わりなくエイジレスに働けるような環境づくりが重要だ。企業を定年退職した人を含むシニア人材の流通システムの整備と職業訓練などのシステムが必要だ。

●定年・雇用継続制度の検討を個別企業の人事制度改革の機会にしよう

 多くの企業は60歳定年制を変えることなく、65歳までの再雇用による継続雇用制度を取っている。しかし60歳定年制は、日本固有の制度でありアメリカでは定年制がない。定年制は雇用の年齢差別となるだけでなく、日本の終身雇用制度と結びつき、終身雇用は年功序列とも結びついている。年功序列は若年層の労働者の不満が強い。

 また定年制度は、年齢一律の制度だ。60歳という年齢では個人の能力差が大きい。意欲、能力、健康から個人別に評価するのが妥当ではないか。70歳超までの雇用が論議されるのをきっかけに、個別企業の人事制度の抜本改革の機会にしてはどうだろうか。

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