コスメ・化粧品業界でSNSマーケティングが加速 その理由は?
2019年4月28日 22:31
「口コミ」は消費者にとっての大きな情報源であると共に、店舗や企業などの生産者にとっては重要な宣伝ツールだ。とくにインターネットやSNSの普及に伴って、その役割はどんどん肥大している。最近では、テレビや新聞、雑誌などではなく、SNSで情報収集しているという人の方が多いのではないだろうか。
30代以上のシニア層がFacebookやブログなどで日記や食事関連の情報を公開することが多い一方、10代から20代後半の若い世代では、買った商品やおすすめの商品をInstagramや Twitter 、LINE などに投稿して友人知人と情報を共有しようする傾向が高いようだ。とくに若い女性ユーザーは化粧品への関心が高く、SNSに投稿したり見たりするだけでなく、YouTubeやInstagramで公開されているスキンケア動画やメイク動画をこまめにチェックしている人も多い。
企業のWebマーケティングもここ数年で大きく変わってきた。これまでは、SEOや検索と連動したWeb広告を中心とした方法が主流だった。もちろん、需要に対してピンポイントにアプローチできるこの手法は現在でも充分有効で、企業が最も力を入れているWebマーケティングではある。しかし、ユーザーの検索や志向が出発点となるため、潜在的な顧客は発掘しにくく、どうしても受動的になってしまう。
一方、SNSの場合は公式アカウントに加え、ユーザー間でシェアされるので、今まで興味の無かった人にまで情報が届く。しかも、知人や友人からの「口コミ」効果で企業のブランドパワーを強めたり、商品の好感度を上げることにもつながるのだ。
また、これまで情報が得られにくかった新しい商品を知ったり、知ってもらったりすることができるのもSNSの大きな利点だ。とくにコスメ商品や化粧品の場合、大手がメディア戦略を繰り広げ、圧倒的なシェアを誇っている。しかし、目立ったメディア展開をしていなくても、質の良いものを提供し続けているコスメ・化粧品ブランドもある。そういった企業や店舗、メーカーなどにとってもSNSマーケティングは今、自社ブランドの認知を高めるチャンスになっているのだ。
例えば、山田養蜂場の「アピセラピーコスメティクス」もその一つだ。同社では5月1日から公式Instagramの本格運用を開始することを発表。4月24日からはプレオープン記念キャンペーンを実施している。期間中に公式アカウントをフォローしてキャンペーン投稿に「いいね」すると、2種類のローヤルゼリーエキスを配合した本格エイジングケア「RJエクセレントシリーズ」フルセットなど、アピセラピーを体感できる商品を合計1001名にプレゼントする。何とも太っ腹な企画だが、実際に使ってみて、その良さを体感した人が情報をシェアしてくれれば、充分な宣伝効果を得られるだろう。
また、ネイル商品を販売する「NAIL PARTNER」のInstagramも面白い。同社の公式アカウントは、おしゃれで印象的なデザインのネイル画像もさることながら、1日の投稿数がとにかく多く、最新のトレンドを発信することでユーザーの関心を惹きつけることに成功している。ネイル商品の会員制販売店でありながら、口コミで人気が広まり、10万人を超えるフォロワーを有する大人気アカウントだ。
また、国内向けのInstagramで圧倒的な人気を誇るコスメアカウントは、ジルスチュアートだ。華やかで可愛らしいブランドイメージが、インスタの画像からも溢れ出していて、見ているだけでも楽しい気分にさせてくれる。とくにInstagramを利用する若い世代にとってはたまらない魅力を発しているようで、画像を見てパケ買いしてしまう人も多いという。
こういったSNSへの取り組みや運用によって、台頭してくるメーカーはこれからも増えてくるだろう。一方、SNSで悪評が広まれば大手といえども一気にシェアを失うことにもなりかねない。これから先のコスメ・化粧品業界は、ブランド名でも歴史でも資本力でもなく、商品力とSNS活用力の勝負になってくるのではないだろうか。(編集担当:藤原伊織)