書籍企画の大切なポイント 自分が何のために本を作りたいのかを正確に把握する【出版社をやってみて分かった「本と企画のつくり方」】
2019年4月27日 12:02
【第1回】この連載では、本Webサイト「biblion」も運営している出版社でこれまで100冊ほどの書籍企画・編集・発行をお手伝いさせていただいた筆者が、経験からお伝えできる範囲で「シンプルな本づくりのポイント」をお話させていただきます。
good.book(グーテンブック)という出版サービスを運営している窪田と申します。
この連載では、もともと編集者でもなかった私が、様々な著者さん・企画とご一緒するなかでわかった範囲で、「本や企画作りのポイント」についてお話させていただきます。(生粋の書籍編集のプロの皆様からはお叱りのお言葉をいただく方法もあるかもしれません。門外漢ゆえの、、としてご了承ください。)
特に「書くことが好きでただ書きたい!」方よりは、「書籍を作って、人に伝えることでお仕事や様々な目的でなんらかの効果を生み出したい」と考える人のための本づくりを中心にお話させていただきます。
弊社の出版サービスは、主に電子・印刷書籍を複数のWeb書店を通じて販売するというものです。大手出版社さんの「全国の書店に書籍を並べて販売する」出版方法とは主に流通面で異なる点は多いのですが、企画の作り方や書籍制作の進め方についてはそこまで大きな違いはないかと思います。
「これから本を作りたい著者さん」あるいは「書籍化したら面白そうなネタがある企画者さん」のご参考となれば幸いです。
後悔しない本づくりのための「3つのポイント」
弊社ではこの5年間、ビジネス書や専門書、絵本から実用書まで幅広いジャンルの本づくりをお手伝いさせていただきましたが、振り返るとうまくいったと思える本づくりには、企画を始める最初の段階で、「企画の進む方向を決める3つのポイント」を押さえることができていたように思います。
今回は3つのポイントのうち、もっとも大切なポイント「何のために本を作るのかを正確に把握する」についてご紹介します。
本づくりのポイント1「何のために本を作るのか(プロジェクトの目的)」を正確に確認する
万人に向けた企画はNG
本づくりの最初に押さえるべきポイントの1つ目は「何のために本を作るのか(プロジェクトの目的)をしっかり(著者自身の気持ちの中でも)整理しておく」ということです。
「本を出したい」という方にお話をお伺いする際に、その目的を伺うと「より多くの人に●●●のことを伝えたいんです」とおっしゃることがあります。
もちろん、せっかくご一緒させていただく本は少しでも多くの方に読んでいただけるとうれしいです。ですが、「万人に向けた企画」は、だれにとってもうれしくない企画となってしまうことが多々あります。
満足のいく本づくりを進めるためには、より具体的に誰が求めている企画なのか、今から作ろうとしている本は具体的にどういう人に届けられるのか(読んでもらえるのか・喜んでもらえるのか)を考えることが大切なように思います。企画が頭の中に浮かぶと、その瞬間、だれもが喜んでくれるような気がします。なぜ今までこの企画がなかったのだろう!と思える時もあるくらいです。
ですが、そこで一度立ち止まって、ちょっと冷静に著者さん自身が具体的に「誰に対して、何を、どのような目的で提供したいのか(できるのか)」をしっかり確認し、その目的に対応した企画内容や流通方法を考える必要があります。
本の「目的」はさまざま
これまで弊社でお手伝いした出版企画の「目的」をいくつか挙げてみましょう。
1:作った本を販売して印税を得たい
2:作った本を会員やセミナー受講生などの限られたコミュニティに届けたい
3:ごく限られたお知り合いに渡すための本を作りたい
4:企業のPR施策として出版したい。特定テーマでの知名度を高めたい。
5:専門性がある情報なので、広く売るというよりも求める人が情報を手に入れられるようにしておきたい
もちろん、目的が1つではないことは多々あります。
たとえば、「会社のPRツールとして1冊をカタチにして広く販売したい」かつ「会社のセミナーや説明会でパンフレット代わりに配りたい」といった場合もあります。この場合は広報と営業支援が本づくりの目的ということになります。
ただし、あまり目的を欲張ってしまうと、本当に達成したかった目的が何だったのかがわからなくなってしまうこともあるかもしれません。
目的を絞り込もう
たとえば、「広く販売して読者を少しでも増やすこと」が目的であれば、企画段階である程度は市場ニーズの確かなテーマ設定(企画の切り口)にする必要があります。具体的にはWeb上での検索数や、類書の販売状況から、一定以上のターゲットを狙う必要があります。(あわせて類書が多すぎないか、といったライバルの分析も必要です。このテーマについては次回の記事でお伝えします)
逆に「限られたコミュニティに濃度の高い情報を届けたい」が本づくりの目的だった場合には、中途半端な一般受けはあまり考える必要はないでしょう。
コミュニティのことだけを考えて、ぶっちぎった専門性のある情報を本に込めるべきだといえるでしょう。(この場合は、あえて一般販売しないことで、公開しては伝えられない情報も書籍に含めるという選択もアリです)
「売る必要はあるのか?」
「広く売りたい場合の広くは何人か?1000人か?10万人か?」
「書店(あるいはWeb書店)で売る必要はあるのか?」
「コミュニティに届ける場合は、具体的には1年間で何人に届けたいのか?」
など、それぞれの目的を(仮でもよいので)数字のイメージを含めて考えることで、より具体的に本づくりを通して著者自身が何を達成したいのかが見えてきます。これらの目的が明確に絞り込まれていると、制作をお手伝いする編集者さんや出版社もとても動きやすくなります。
むやみやたらと「本を少しでも多く販売したい・届けたい」と目的を広げてしまうと、著者にとっても出版社にとっても、ムダなコスト(お金に限らず時間のコストも含めて)をかけてしまうことになりがちです。
本当に著者がやりたいことが具体的・明確に定義されていれば、実現するために最低限必要な「作り方」と「流通方法」を考えることができ、目的に向けて「最大限の労力」をかけることができるんじゃないかな、と今となっては感じます。
(とはいえ自分で考えた企画は、やっぱりもっと広がるはずだ!といつも思ってしまうんですが。)
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