コラム【アナリスト夜話】:リスクオン全開市場はどこまで続く?(マネックス証券チーフ・アナリスト大槻奈那)

2019年4月24日 09:51


*09:51JST コラム【アナリスト夜話】:リスクオン全開市場はどこまで続く?(マネックス証券チーフ・アナリスト大槻奈那)
先週末、格付「BB-」(R&I)のアイフルが公募社債を発行すると報じられました。実現すれば日本史上初のハイイールド公募債です。しかも、投機的格付けにも関わらず、1.5年で1%程度の低金利で、「優良案件」との声が出ています。まさにリスクオン市場を象徴するディールです。

FRBの利上げで昨年末までの諦めかけていたリスクマネーが、再度高リスク案件に結集しています。今月初旬には、政府が一時期国際的な批判を浴びたサウジアラムコの社債が、発行額の10倍、11兆円もの需要を集めましたし、ギリシャの2年物の国債利回りが米2年物国債を11年半ぶりに下回りました。さらに今月発表された世界の住宅価格ランキングでは、トップの香港のハイエンドマンションの平均価格が1.3億円にも上りました(CBRE)。

リスクオン相場はどこまで行くのでしょうか。10連休を前に、そろそろポジション整理のタイミングも気になるところかもしれません。

経験則としては、こうした市場の活況は、政策的な「横やり」が入るまで続く傾向があります。日本のバブル崩壊も日銀と大蔵省の資産価格対策が契機でした。サブプライム問題も、FRBの大幅な利上げや、連邦捜査局FBIまでもが、不適切な過剰融資に対する捜査を行ったことなどがトリガーを引きました。

これに対し、現在市場動向に警鐘を鳴らしているのは、ほぼBISやIMFといった国際機関だけで、各国当局はアクションを取っていません。先週発表された日銀金融システムレポートでも、「不動産貸出」には29年ぶりに行き過ぎサインが出されましたが、地価や株価は安全圏としています。

背景には、やや逆説的ですが、政治面での不安定さがあると思います。ブレグジットに、トランプ氏のロシア疑惑、米中貿易問題、そして日本も、揺れは小さいですが消費増税などの不確実性が色濃い中、経済には頑張ってほしいとむしろ後押ししている印象です。
そして、今のところ、再度の米金融緩和はまだ始まったばかりですし、政治の混乱は急拡大もない代わり長引きそうなので、政府が市場の沈静化に動く可能性は極めて低いでしょう。

どこかでは結末を迎える拡大相場ですが、目先の10連休は、海外投資家がよく言うcautiously optimistic (慎重ながら楽観的に)というスタンスが適切という印象です。

マネックス証券 チーフ・アナリスト 大槻 奈那
(出所:4/22配信のマネックス証券「メールマガジン新潮流」より、抜粋)《HH》

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