心地よい匂いで喫煙に対する渇望が緩和
2019年4月22日 09:27
心地よいと感じる匂いの嗅覚刺激(OC)により、喫煙に対する渇望が緩和されるとの研究結果が発表された(プレスリリース、論文: PDF、SlashGearの記事)。 論文の筆頭執筆者は20年前にも同様の研究を行っているが、過去の研究で使用しなかったタバコに関連するOCを追加することやOCによる効果の持続性を調べること、自伝的記憶との関連を確かめること、同じOCを繰り返すことで効果が低下しないかどうかを調べることなどが今回の研究の目的だという。 被験者は実験時点で1日に10~30本の喫煙を少なくとも12か月以上続けており、電子タバコやニコチンパッチといった紙巻きタバコ以外のニコチン製品を使用していないこと、今後30日間に禁煙したり喫煙本数を減らしたりすることを考えてないことなどの条件で選ばれた18歳~55歳の232名(女性107名、男性125名)。2日にわたって行われる実験セッション前8時間以内に喫煙しないことが求められており、実験前には呼気中の一酸化炭素濃度のチェックも行われた。実験で使用するため、被験者はいつも吸っているタバコとライターを持ってくるようにとの指示を受けている。 実験で使われたOCは、クミン・チョコレート・リンゴ・ペパーミント・バニラ・レモン・スズランのほか、不快な匂いとされることの多いマツタケアルコール、2種類のパイプタバコ、被験者が持ってきたタバコ、無臭の12種類だ。被験者は12種類のOCをかいで心地よさの評価を行ったのち、自分のタバコに火をつける(吸ってはいけない)、割り当てられた1つのOCをかぐ、といった作業を行い、作業の前後で喫煙への渇望度合いを0(まったく喫煙したくない)~100(これまで感じたことがないほど喫煙したい)の100段階で評価する。使われるOCは被験者が最も心地よいと評価したもの・被験者が持ってきたタバコ・無臭のうち1つが割り当てられる。 渇望度の中央値はタバコに火をつける前には69.40だったが、火をつけたあとでは82.13まで上昇している。OCをかいだ後では、心地よいOCが割り当てられた被験者で19.3ポイント低下したのに対し、タバコOCでは11.7ポイント低下、無臭OCでは11.2ポイント低下にとどまった。また、この後5~45分間喫煙できないと仮定した場合の渇望度予想値も心地よいOCで低くなっている。被験者の89%は今後禁煙しようとすることがあればOCが助けになると答えており、93%は禁煙しなくても一定時間喫煙できない場合にOCが使えると答えたという。また、自伝的記憶とOCの結びつきがある場合に渇望度を低下させる効果が強かったそうだ。 今回の研究は実際の禁煙におけるOCの効果を示すものではないが、OCを禁煙プログラムの有用なコンポーネントとして提案する確固とした基礎になると考えられるとのことだ。