低収入の男性ほど性体験乏しい 少子化は雇用環境も一因か 東大の研究成果

2019年4月9日 13:00

 過去20年間で、異性との性交渉を経験したことのない日本人の割合は増加し、特に無職や非正規労働の男性で割合が高い、とする研究成果を東京大学が8日、公表した。バブル崩壊後、長年にわたって厳しい雇用環境が続く一方で、出生率も低下して少子高齢化が進んでおり、研究グループでは「出生率向上には、雇用や収入の状況によって、性交渉のパートナーを見つけられない人に対する政策を考えことも一案」だとしている。

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 研究成果を発表したのは、東大大学院医学系研究科の渋谷健司教授(研究当時・現在客員教授)らの研究グループ。グループでは厚生労働省の国立社会保障・人口問題研究所が5年に1度実施している「出生動向基本調査」のうち、1987年から2015年までの7回分の調査データを分析。18歳から39歳までの男女の回答から、性別・年齢ごとに異性間性交の未経験者の割合を算出した。

 その結果、1992年から2015年までの23年で、18歳から39歳の成人男女のうち、性交渉を経験したことのない女性は21.7%から24.6%に増加。男性も20.0%から25.8%に増加した。年代別でみると、30代で割合が増加しており、30-34歳では1987年から2015年の間に女性が6.2%から11.9%に、男性で8.8%から12.7%に増加。35-39歳では1982年から2015年の間に女性が4.0%から8.9%に、男性で5.5%から9.5%に増加した。

 特に男性は雇用形態や収入が性交渉経験の有無が有意に関連しており、25-39歳の男性では、年収が増加するほど、未経験者の割合が減少。非正規雇用の従業員や無職の人ほど、未経験者が多かったという。

 日本では、男性の収入と婚姻率には関連性があり、過去20年以上続いた不安定な雇用状況が、日本の婚姻率や出生率の要因の一つになっていると指摘されている。しかし今回の結果で、低収入や無収入の男性は結婚以前に、性交渉のパートナーを見つけることさえ困難な状況にあるとことが示唆された。研究グループでは、「性交渉未経験者の増加の要因や、それによる少子化への影響などを、さらに研究していくことが必要だ」としている。

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