商船三井、事業の選択と集中により経常利益大幅改善を目指す

2019年4月2日 19:08

 商船三井は3月29日、トルコのKarpowership社とLNG発電船事業に関するパートナーシップを構築し、発電船事業に共同で投資、営業活動を行うと発表した。

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 世界最大の発電船事業者との提携によって、顧客にとって初期投資を抑制し短納期でのLNG発電が可能となり、コスト競争力の強化が期待でき、従来の重油焚き発電設備に比べ環境負荷を低減できる。さらに両社のノウハウ、ネットワークを生かすことによるシナジー効果が見込める。

 商船三井は1878年、三井物産が鉄製蒸気船「秀吉丸」で三池炭鉱の海外輸送を開始したことに始まり、1942年に三井船舶として独立した。一方1884年には、瀬戸内航路を主として運行する60余りの船問屋が統合して大阪商船が設立された。

 第二次世界大戦で日本の商船隊は壊滅状態となったが、貿易立国として戦後復興する過程で1964年、日本海運業の大型集約で6社体制となる中、大阪商船と三井船舶が合併し大阪商船三井船舶が誕生し、1999年にナビックスラインとの合併を機会に商船三井となった。

 現在連結対象会社449社とグループ運航船舶規模795隻、5,724万重量トンを有し、前期売上高の内、鉄鉱石、穀物などの資源を輸送するトラベルク船事業で17%、油送船、石炭船、LNG船、海洋事業などのエネルギー輸送事業で16%、自動車船、コンテナ船事業、フェリーなどの製品輸送事業で61%、不動産、商社、客船などの関連事業で5%、その他で1%と地球全体を舞台として事業を営み、世界経済の発展に貢献している商船三井の動きを見ていこう。

■前期(2018年3月期)実績と今期見通し

 前期売上高は1兆6,523億円(対前年比10%増)、経常利益は前年よりも60億円増の314億円(同24%増)であった。

 経常利益増加の要因としては、積取り/運賃変動・その他の改善により177億円、海外比率13%の中前年に比べて円安(1ドル109円->111円)により為替差益2億円の増益要因に対し、燃料単価上昇(1MT 284ドル->354ドル)により119億円の減益によるものである。

 期初に前期売上高7,497億円、経常損失106億円のコンテナ船事業を商船三井31%、川崎汽船31%、日本郵船38%出資の持ち分法適用会社へ移管した影響と燃料単価上昇(1MT 464ドル)に伴い、今期第3四半期(4-12月)売上高9,422億円(同24%減)、経常利益246億円(同29%減)の実績を受けて、今期見通しは売上高1兆2,000億円(同27%減)、経常利益280億円(同11%減)を見込んでいる。

■経営計画(ローリングプラン)による推進戦略

 2027年には、経常利益目標1,500億円(対前期比378%増)~2,000億円(同537%増)を目指して、1年ごとに見直しする経営計画で次の戦略を推進する。

 1.コンテナ船事業の損益改善、黒字化:国内3社のコンテナ船事業の統合により、広範囲なネットワーク構築、革新的なコンテナターミナル運営などにより、1,100億円のシナジー効果を目指す。

 2.強みを持つ事業の拡大、強化
 ・油送船サービス:液体化学品を輸送するケミカルタンカー、メタノールタンカーの充実。
 ・海洋事業サービス:洋上風力発電関連事業、浮体式LNG貯蔵再ガス化設備、浮体式海洋石油/ガス生産貯蔵精出設備の強化。
 ・フェリーサービス:ネットワークを拡大し、旅客営業の強化。

 燃料単価、運賃変動など市況の影響を大きく受ける海運ビジネスで、事業の選択と重点集中により長期的に経常利益の大幅改善を目指す商船三井の動きから目が離せない。(記事:市浩只義・記事一覧を見る

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