「閉鎖的な状況」ほど問題はエスカレートする

2019年3月28日 18:42

 ある県立工業高校で、1年生の男子生徒が担任の男性教諭から暴言を繰り返し受け、頭を丸刈りにされたとして、同じクラスの生徒全員と保護者が、謝罪と教諭の懲戒免職を求める嘆願書を教育委員会に提出したというニュースがありました。
 教育委員会は、事実関係を確認中としていて、処分を含めて検討するとのことで、教諭は新年度から別の高校へ異動するとのことです。ただし詳細はコメントを控えるとしています。

 また、ある保育園で、女性保育士3名が園児に暴言などを繰り返し、市から行政指導を受けていたというニュースもありました。保護者から苦情を受けて、園長らは保育士の不適切な言動を把握して、口頭で指導をしていたそうですが、その後録音された音声データでも改善されていませんでした。
 暴言を繰り返した保育士は、退職するとのことです。

 学校などでは大人である教師の方が明らかに強い立場で、さらに教師が個人で生徒に向き合うことがほとんどなので、他の大人の目が届きにくい閉鎖的な環境であることが、こういう問題を引き起こす一因になっているでしょう。
 上記の保育園のケースでは、注意されているにもかかわらず改められなかったということですが、直接見られなければ大丈夫などと、たかをくくっていたようなところがあったのではないでしょうか。
 いずれにしても、当事者以外の第三者の目が届きにくかったことは間違いないでしょう。

 企業でのパワハラも、これらと基本的な環境は似ています。上司が強者として傍若無人な振る舞いをし、周りの人はそれを止められないか知らないかのどちらかです。止められないのは、本人に辞められたら困るなど、周りの人の相対的な立場が弱いからで、注意できる第三者がいません。
 隠蔽や不祥事も、部外者である第三者にバレなければいいという発想なので、やはり同じように閉鎖的な状況ありきの話です。

 第三者の客観的な目が届かない閉鎖的な状況では、問題が非常に大きくなることがわかります。どんなに真面目で善良な人でも、環境次第で行動が変わってしまいます。

 ここで思い出すのが、倫理的に大きな問題があった心理学実験として有名な、「スタンフォード監獄実験」の話です。
 監獄を模した施設で被験者を囚人役と看守役に分け、その行動を観察するというもので、「人間の行動は、その人の気質や性格で決まるのではなく、置かれた状況によって決まる」ということを証明しようとした実験ですが、看守役の非人道的な行動はどんどんエスカレートし、それに対して囚人役は無抵抗となり、ストレス障害を発症する者も出たことから、当初の予定を大幅に短縮して打ち切られました。まさに状況が人間の行動を大きく変えたわけです。

 また、この実験をおこなった心理学者は、障害を発症して離脱する被験者が出ても、実験をやめようとしないほどのめり込み、同じ心理学者である恋人から強く非難されたことで、我に返って実験の中止を決断したそうです。
 それほど周囲からの働きかけは重要で、さらに閉鎖的な傾向が強い環境であるほど、その働きかけが強くなければ変わらないということです。

 パワハラやセクハラ、隠蔽や改ざん、ブラック企業など、最近の企業で起こっている問題はどれも、「閉鎖的な組織状況」という共通点があるように思います。
 これは社員同士、取引先や関係先、その他組織外部の人と、できるだけ活発に交流することで、問題の発生はずいぶん防げます。
 第三者の客観的な目を取り込むことは、とても大事です。

※この記事は「会社と社員を円満につなげる人事の話」からの転載となります。元記事はこちら

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