進む行政の民間アウトソーシング BPO市場は5.2兆円まで拡大
2019年3月22日 12:33
地方自治体の財政赤字もいまだ増加傾向である。この背景には少子高齢化、人口の減少という構造的な問題がある。90年代後半以降、高齢化が加速し行政への重要は膨張する。高齢化のみでなく社会の情報化・多様化の進展に従って行政需要も量的にも分野的にも増大傾向で推移している。
一方、地方税収入は伸び悩んでいるため赤字基調が続いてきた。自治体もこうした時代の変化を受けてリストラを繰り返し、一般行政職員の数は90年代初めと比べ8割以下まで減少している。少ない人員で増大し続ける行政需要に対応するためには民間活用が不可欠だ。これまでも人材会社の利用を中心とする行政事務のアウトソーシングが普及してきたが、今後さらなる行政需要の多様化に対応するため自治体のBPO(ビジネスプロセスアウトソーシング)は拡大傾向で推移する見込みだ。
矢野経済研究所が13日、国内の自治体向けBPOサービス市場の調査結果を発表している。レポートによれば、2017年度の自治体向けBPOサービス市場規模は売上高ベースで推計すると4兆2400億円となり、前年度比で3.2%の増加となっている。 レポートでは、住民からの行政ニーズが多様化する一方で職員数は減少しており、職員の負担は大きくなっているとともに、自治体事業は利用者が減少しても直ちに事業縮小することは難しく、こうした事情を背景に民間活用のアウトソーシング化が進んでいる、としている。
今後の動向としては、事務代行、施設運営代行、社会インフラ関連業務代行などのサービスが引き続き拡大傾向で推移すると予想され、市場の拡大とともに多様なノウハウを持つ事業者が現れてきており、自治体の事情にあったBPOサービスの選択幅が広がって、BPOを導入する自治体は増加傾向で推移するものとみられる。
こうした動向からレポートは18年度の予測値を4兆4118億円と推計し、17年度から23年度までの年平均成長率は3.5%と見込み、23年度の市場規模は5兆2127億円にまで達すると予測されている。
ちなみに、水道事業におけるコンセッション(公共施設等運営権)方式については事業全体を1社で実行できる企業が少なく、この分野は従来どおり部分的利用にとどまると予測されているが、全体運営可能な企業が出現する可能性は否定されていない。
財務赤字の傾向が残っているというものの、パブリックサービス提供者としての自治体の努力は続いており、自治体の民間化、企業化が大きく進展する見込みだ。(編集担当:久保田雄城)