最近よく聞く「ESG投資」 経営者としてこれだけは知っておきたい
2019年3月22日 21:05
新聞等でたびたび話題となるESG投資。国際的な調査団体であるGSIAによると、世界中の全ての投資額のうち、ESG投資が占める割合は2016年時点で26.3%にものぼると言う。また、日本が持つ世界最大の年金基金であるGPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)も1兆円規模のESG投資を開始しており、その勢いは加速する。
ESG投資とは、E(Environment)、S(Social)、G(Governance)の頭文字を取ったもの。環境、社会、企業統治に配慮する企業に対して優先的に投資を行うという考え方である。
そう聞くと、慈善事業に寄付をするような印象を受けるかも知れない。もちろん、市民社会が成熟し、投資家の社会貢献意識が高まっているという側面はある。しかしながら投資家の関心の中心は、依然としてあくまで経済的リターン、つまり、「もうけ」である。
従来の投資先の選定では、企業が開示する財務情報から、収益性や成長性などを評価して、「もうかる」投資先を探すことが主流であった。しかしこのような財務情報で評価できるのは、きわめて短期的な「もうけ」である。
例えば、ある企業が途上国に生産拠点を移し、安価な労働力を酷使しながら、産業廃棄物を放置し十分なケアも行わなかったとする。驚くべきことにこれらの行為は全て、短期的には利益を押し上げる。しかしその状況はやがて、国際社会からの批判にさらされ、社会的信用を失うだろう。損害賠償による経済的損失が発生するおそれもある。このようにESGを意識しなければ、長期的には利益を押し下げることにつながる。
つまりESG投資の加速は、投資家のねらいが短期的なリターンから長期的なリターンにシフトしていることが原因と言える。このことは、GPIFが長期にわたる年金の運用主体であることからもわかる。
ESG投資の対象は主に上場企業であるが、中小企業にとっても無関係ではない。上場企業がESGを意識するということは、同時にそれを取引先にも求めるからである。例えば、環境負荷の低い原材料を調達しようとすれば、仕入先にそれを要求する。あるいは金融機関はESG対策として、社会貢献度の高い企業に融資する。
このように、規模に関わらず、全ての会社経営者は今後、常にESGを意識していかなければならない状況になりつつあると言える。