スルガ銀行・TATERU・レオパレス21、賃貸住宅融資を機能不全に追い込む
2019年3月21日 08:49
スルガ銀行の株主6人が、同行の有国三知男社長に総額約565億円の損害賠償を求めて静岡地裁に提訴したことが、18日に報じられた。
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スルガ銀行は不正融資問題で、既に18年11月12日、創業家の岡野光喜前会長ら当時の9人の経営陣に対して総額35億円の損害請求訴訟を静岡地裁に提訴している。この時点でシェアハウス物件所有者の代理人弁護士団は、有国社長が対象者から漏れていることを問題視して、請求額の確定作業を進めていた。
スルガ銀行の不正融資問題に関しては、銀行が9名の元経営陣に向けた訴訟と、株主が銀行の有国社長に向けた訴訟の、2つ損害賠償請求訴訟が並行することになった。
18日に行われたレオパレス21問題の外部調査委員会による中間報告で、一連の不正に同社の創業者で当時の社長による「トップダウン」の指示があったことが明らかにされた。報告書では施工不良の理由として、建築の受注や賃料収入の増加を優先したために、工期の短縮と施工作業の効率化を進めたとしている。
明らかに組織的な不正であるが、早急な対応が必要とされた641棟のレオパレスに居住する7700人の移転の進捗は進んでいない。18日現在で引っ越し済みは425人、3月末までに1100人で、4月以降に見込まれるの480人を合わせても、合計2005人に止まっている。率にすると見込みを含めても僅か26%という低調さだ。
レオパレス21では、入居者の移転支援や補修工事の調整要員を1千人から2千人に増員して対応するとしているが対応の遅れは明らかで、国交省が求める夏が到来する前までに改修工事を完了することは至難と言わざるを得ない状況だ。
銀行にとって資金の貸出先が少ない厳しい状況が続いているが、そんな銀行にとっても賃貸住宅への融資は二の足を踏ませるタブーとなった。
もともと銀行員は行内で「減点評価」される。プラスの実績も大事だが、マイナスの事故があれば元も子もない。それでなくとも、スルガ銀行やTATERUで融資関係書類の改ざんが喧伝されている業界である。そこに、設計図をないがしろにするかのような不良施工をする業者が明らかになった。
賃貸住宅融資は地雷原に足を踏み込むようなもので、普通の銀行員は、賃貸住宅案件の相談があっただけで腰が引けることは間違いない。実績も信用もない先が、融資実行までたどり着くことは不可能にも近いといえる状況である。一連の騒動が終息して人々の記憶から消え去るまで、賃貸不動産に対する冬の時代は続くかも知れない。(記事:矢牧滋夫・記事一覧を見る)