セブンイレブンが開けたパンドラの箱から、飛び出したモノ!(2-1)
2019年3月20日 18:39
突如世間の注目を集め、その帰趨に強い関心が寄せられていたセブンイレブンの「24時間営業」問題に対して、発端となった東大阪市の南上小阪店オーナーである松本実敏さん(57)がセブンイレブンから「時短営業を理由にして契約を解除することはない」と伝えられていたという。
【こちらも】24時間営業問題で「パンドラの箱」を開けたセブン コンビニは変わるのか? 変われるのか?
「24時間営業」問題に対するオーナーの苦衷を、図らずも社会にさらけ出すという「パンドラの箱」を開けてしまったセブンイレブンは、「契約に関わらず時短営業を理由にして契約解除をしない」と伝えることで、契約の目的そのものが曖昧になる結末を招来させた。
日本各地のフランチャイズ店(FC店)のオーナーが、セブンイレブンのエリア担当者に対して、弾力的な営業時間の設定を求める声は以前から上がっていた。今回の騒動が勃発してから、セブンイレブンの全ての店舗が24時間営業だったわけでないことも明らかになった。
FC店の新設計画時点では、固有の条件や事情を斟酌する弾力性はあったが、事業を開始したFC店が営業時間を短縮することには、相当な抵抗があったようだ。「24時間営業は絶対続ける」という社内の雰囲気があれば、地域担当者がオーナーの「時短でやりたい」という声を、上司に伝えることをためらっても不思議ではない。
ラインにつながる部・課・係長等にとって、最高責任者が「絶対続ける」と公言していることに反する話題は口にしにくい。分かり切っていることを口にするのは”野暮だ”と忖度することは日本で珍しくない。組織内で忖度が進み、話題にすることがタブーになると、現場の最前線であるFC店のオーナーと接する地域の担当者が板挟みになる。詳しい経緯は不明だが、セブンイレブン本部がペナルティを課す決定をしたようには見えない。
南上小阪店の抱えていた状況が既に極限状態であった、というところにポイントがあるだろう。FC店に残された最後の手段が、オーナーの独断による営業時間の短縮であったが、事態が明るみに出ると、類似の事例を指摘する声も出てきて、一気に同情が集まった。
対極には、「契約書」の記載事項を実行するのは当然だという常識がある。法律的にはその通りだろうが、「いい気分」を標榜する企業が「非情な仕打ち」と受け止められる行為を、世間が注目する中で貫徹できるのかというデリケートな問題でもある。
そこで該当店の松本オーナーに対して「時短営業を理由にして契約を解除することはない」と伝えたようだ。当事者同士のやり取りなので、第三者には確認するすべはないが、これだけ大きな話題になっていることに、オーナーが「本部から伝えられた」と公表している意味は大きい。反論がない以上は事実だろうと周りは推測する。
かくして、営業時間に関する限り「契約書」の記載事項は無意味になったといえる。固唾をのんで成り行きを見守っていた同じ悩みを持つオーナーにとって、最悪の場合の選択肢が一つ示されたことになるからだ。(2-2に続く)(記事:矢牧滋夫・記事一覧を見る)