介護離職者の7割「今まで積んできたキャリアがゼロに」と後悔
2019年3月19日 08:46
多くの企業で働き方改革への取り組みが行われている。人口減少を背景とする人手不足の中、様々な事情を持った人々全てにとって働き安い職場を作るためだ。その中には親の介護をしなければならない人達も含まれており、こうした人達への配慮の努力は概ね好評価のようだ。とはいえ、介護の問題は家族の問題で社会化すべきではないという保守的な考えも強い。
しかし介護の問題は介護離職という形で人材のキャリア形成にも影響し経済社会のあり方に強い影響を与える。内閣府の調査では介護等を理由とした離職・転職者は年間10万人にものぼり、その予備軍は100万人と推測されている。総務省の調査では介護離職をした者のうち再就職できた者は43.8%で、半数以上が社会復帰できていない現状だ。これはマクロ経済的にも大きな人材資源の喪失である。
介護資格学校を運営するガネットが全国の40代以上の介護経験者の男女457名を対象に「介護離職に関する意識調査」を2月に実施し、その結果を公表している。
「介護をすることになったとき会社に相談するか」という質問に対しては、「相談した」との回答はわずか23.4%にとどまり「相談しなかった」は76.6%と8割近くになった。理由は「会社に相談しても頼りがいがない」、「相談できる人がいない」などの意見が目立つ。
介護保険、介護休暇、介護休業、介護離職サポートサービスについての認知度を見ると、「介護保険」については「知っている」と答えた者が72.6%であるのに対し「休暇」、「休業」では「名前だけ知っている」が3割程度で最も多く、「サポート」については「全く知らない」が32.6%で最も多くなっている。
「介護離職の検討や経験」については、「考えたことはない」が68.1%で最も多く、「介護離職を経験した」は9%にとどまっているものの「考えた経験あり」を含めると32%と決して少なくない。検討した・経験した者のうち約8割は「仕事と介護の両立は難しい」と回答している。実際に離職の経験はあるかという質問で「介護離職を経験した」と答え、さらに「後悔した」と回答した者にその理由を聞いた結果では、「今まで積んできたキャリアがゼロになった」という答えが66.7%で約7割に達している。
厚労省もホームページで「仕事と介護の両立~介護離職を防ぐために~」と題して労働者の継続就業を促進するため「介護で仕事を辞める前に都道府県労働局へ相談するように」と呼びかけている。介護離職サポートについてさらなる啓蒙が必要だ。(編集担当:久保田雄城)