【どう見るこの相場】期末の需給関係がマイナスでもプラスでも定番の配当権利取りイベントは「三本立て劇場」でアプローチ
2019年3月18日 09:17
翌週の株高の吉兆である「金曜日の引けピン」とはならなかった。前週末15日の日経平均株価である。前引けの234円高が引けてみれば163円高である。上値の伸びを欠いたことになる。しかしヤレヤレと胸をなでおろした投資家も少なくないはずだ。何しろ、その前2日間は、「朝高のあとダレる」上値の重い動きが続いたからだ。14日などは朝方の232円高が引けてみれば、3円安と大失速した。それがとにかく前日比プラス、それも3ケタのプラスで終わったからだ。 この期末相場の上値の重さは、年度末特有の需給関係によるもので、国内機関投資家の決算対策売り、持ち合い株の解消売りなどが上値を抑えたためと分析された。3月に入って唐突に任天堂<7974>(東1)と信越化学工業<4063>(東1)などの主力株に続いた自己株式取得は、持ち合い株の解消に対応するもので、今後も、期末に向け政策保有株の売却が加速するのではないかと警戒もさせた。
この年度末は、株価にマイナスばかりかプラスに働く特有の需給関係もある。プラス要因として期末の配当権利取り、機関投資家による配当の再投資、さらに期末の株価を一定水準に収めるお化粧買い、GPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)の持ち高調整の買いなどがあげられる。もし、15日の日経平均株価の163円高で期末需給のマイナス要因の決算対策売りや政策保有株の売却が一巡したとすれば、今度はプラスの需給要因に出番が回ってくることも想定されるわけで、そうなると期末相場高のシナリオも浮上することになる。
もちろん「株価は材料より需給」とする相場感はあるものの、グローバル市場の影響を受ける東京市場は、期末の需給要因と同等かそれ以上に材料が、相場の先行きの方向性を左右する可能性は大きい。米中貿易協議が合意に至るのか、英国のEU(欧州連合)離脱交渉でメイ首相の指導力が発揮されるのか、明19日から開催されるFRB(連邦準備制度理事会)のFOMC(公開市場委員会)で政策金利の引き上げを急がないと確認されるかなどがポイントとなる。このなかでFOMCに関連して注目されるのが、高配当利回り株である。政策金利が据え置かれることになれば、当然、買い直されることになるからだ。東京市場でも、15日に閉会された日本銀行の金融政策決定会合では現状維持が発表されたが、次回の4月24日会合に向け追加金融緩和策への催促が強まってくるとの観測もしきりである。
とういことで当コラムでは、期末定番の配当権利取りイベントに照準を合わせてみたい。前週は、創立・創業100周年記念の増配を予定している銘柄を中心にメモリアル増配株を取り上げたが、今回は「三本立て」劇場でインカム・ゲイン妙味株にアプローチすることをお薦めしたい。「三本立て」とは、政策保有株売却の圏外に位置すると推定される極低位値ごろ有配株のほか、常連銘柄の連続増配株、日経225構成銘柄の高配当利回りランキングの上位株である。配当利取りの一兎追いが、諺とは逆の値幅取りの二兎追いを実現してくれるケースもあながちあり得ないことでないかもしれない。
■極低位有配株では投資採算的にも割り負けの資源関連株、地銀株が浮上
極低位株は、全市場を見回せば株価が1ケタや10円台、20円台、30円台などに低迷する銘柄がゴロゴロしている。その実態をよくみれば業績は赤字続き、配当は無配継続など、果たして上場資格を充足しているのか頭を傾げたくなる銘柄が大半である。そのなかで配当を維持し黒字業績からPER面でも評価できる銘柄は希有の存在で、さらに極低位値ごろ自体が最大の株価材料にもなる。例えばエー・ディー・ワークス<3250>(東1)の株価は、昨年来安値水準の34円に低迷し、今2019年3月期配当も0.35円(前期実績2円)と予想、配当利回りは1.02%にとどまる。ただ今年1月30日に発表した今期第3四半期業績で、純利益は、今期通期業績計画に対して97%の高利益進捗率を示しており、決算発表に先立って開示する今後の業績フォーキャストに期待を高め、ことによると配当異動の思惑も高まりそうだ。
この極低位株で低PERで高配当利回りが目立つのが、資源関連株、地銀株である。日本コークス工業<3315>(東1)は、すでに今2019年3月期業績を2回上方修正して減益率を縮小させ配当利回りは3.03%、PERは10倍台、また住石ホールディングス<1514>(東1)も、配当利回りは3%、PERはわずか3倍台にとどまる。地銀株ではいぞれも今2019年3月期業績の第2四半期累計業績、3月期通期業績を上方修正したじもとホールディングス<7161>(東1)の配当利回りが4.13%、PERが9倍台、フィデアホールディングス<8713>(東1)が、同じく4.54%、7倍台と割り負けている。また今2019年3月期の純利益を上方修正したオリエントコーポレーション<8585>(東1)も、同じく1.66%、8倍台となる。
このほか台風21号の暴風雨被害で今期業績を下方修正し、年間配当を3.5円に減配したホクシン<7897>(東1)は、それにもかかわらず配当利回りは2.57%、PERは18倍となっており、今期に2回、自己株式取得を発表したインプレスホールディングス<9479>(東1)は、同様に1.71%、13倍台となる。
■市場平均を上回る連続増配銘柄、日経225ランキング上位銘柄にもインカム・ゲイン妙味
定番銘柄の連続増配銘柄では、12月決算会社の花王<4452>(東1)の28年連続を筆頭に10年~20年間の連続増配銘柄が多数に上るが、このうち3月期決算会社で高配当利回り、低PER・PBRが目立つのがリース株である。年間配当利回りが3.46%とトップの三菱UFJリース<8593>(東1)は、東証1部全銘柄平均の1.98%を上回り、今2019年3月期純利益を上方修正したこともあり、PERは7倍台と割安でPBRも0.6倍にとどまっている。芙蓉総合リース<8424>(東1)、興銀リース<8425>(東1)、東京センチュリー<8439>(東1)、リコーリース<8566>(東1)ともども要注目となる。
通信株ではKDDI<9433>(東1)、沖縄セルラー電話<9436>(東1)、中堅株ではSPK<7466>(東1)、高速<7504>(東1)が、連続増配株の常連株として期末に賑わいをみせる展開も想定範囲内となる。
日経平均株価の構成銘柄の高配当銘柄では、何といっても日産自動車<7201>(東1)が、キー・ストックとなりそうだ。同社株は、今3月期の年間配当を57円(前期実績53円)へ連続増配を予定し、配当利回りは6.07%となり、カルロス・ゴーン元会長が特別背任罪などで逮捕・起訴され会長職を解任され、今年2月には今期業績を下方修正したが、この連続増配を変更していない。これは筆頭株主の仏ルノーを多分に意識しているためとみられており、今年3月にルノー、三菱自動車<7211>(東1)との3社による新アライアンス体制が創設されたあと、この高配当がどうなるのか、4月5日開催予定の臨時総会以降の注目ポイントとして株価を刺激する可能性もあるからだ。
日産自以下、3月期決算会社で期中に業績の下方修正がなかった銘柄に限定して高配当ランキングのトップ10位にランクインする銘柄を上げると、高配当利回り順に次の9社となる。あおぞら銀行<8304>(東1)、長谷工コーポレーション<1808>(東1)、三菱ケミカルホールディングス<4188>(東1)、東京海上ホールディングス<8766>(東1)、住友商事<8053>(東1)、NTTドコモ<9437>(東1)、丸紅<8002>(東1)、三井住友フィナンシャルグループ<8316>(東1)、りそなホールディングス<8308>(東1)となり、第10位のりそなHDの配当利回りでも、4.26%と日経225構成全銘柄平均の2.20%を大きく上回り、インカム・ゲイン妙味を示唆している。(本紙編集長・浅妻昭治)(情報提供:日本インタビュ新聞社=Media-IR)