2万8千年前のマンモスの細胞が活性を取り戻す 近大などの研究

2019年3月13日 20:57

 シベリアの永久凍土の中で2万8,000年に渡って眠っていたマンモス。その化石から採取した筋肉組織から回収した細胞核を、マウスの卵子の中に移植、新たな細胞核を形成させることの観察に、国際共同研究グループが世界で初めて成功した。

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 研究グループは、近畿大学生物理工学部(和歌山県紀の川市)ならびに近畿大学先端技術総合研究所(同、海南市)を中心として、ロシア連邦サハ共和国科学アカデミー、東京農業大学、東京工業大学、国立環境研究所らからなる。

 絶滅種の持っていた遺伝情報や、絶滅の要因に関する情報は貴重なものである。中でも、永久凍土の中から稀に発見されるケナガマンモスは人類にとって大きな注目の的となる絶滅種の一つであるといえ、これまでにも全ゲノム情報の解読、ヘモグロビンの再構築、体毛色の再現などの研究が行われてきた。

 近畿大学は1996年からロシア北東シベリアのサハ共和国と共同で、マンモスの研究に取り組んできた。2010年、Yukaと名付けられたマンモスが永久凍土から発見されたのだが、このYukaの組織を用いて、最新の技術を用いてその生物情報の解析、ならびに、細胞核の生物学的活性に対する評価が試みられた。

 回収したマンモスの筋肉由来の細胞核をマウス卵子に移植し、ライブセルイメージング技術によって観察したところ、細胞核への「ヒストンH2B」の取り込み、各周辺における紡錘体の形成、つまり細胞分裂を起こしかけている姿が観察された。さらには、細胞核の一部が分離して移動、マウスの卵子の核に取り込まれていく姿も世界で初めて観察された。

 マウス卵子にDNAの修復機能があることは既に知られていた事実であったが、化石由来のDNAがそれで実際に修復できる可能性が実験的に示されたのはこれが初のことであるという。

 なお、研究の詳細は国際的なオンライン科学雑誌「Scientific Reports」に掲載されている。(記事:藤沢文太・記事一覧を見る

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