老舗スナックメーカー湖池屋の消費者に愛されるブランド作り

2019年3月12日 12:47

■消費者動向への理解は経営安定のカギ

 消費者の購買パターンは常に変わりつつあり、経営者や販売・マーケティング担当者は業界の変化や消費者ニーズを的確に読み取る必要があります。

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 例えばここ数年頻繁に現れるキーワードには、「コト消費」や「アマゾン・エフェクト」があります。「コト消費」とは形がある「モノ」ではなく、ライブコンサート、テーマパーク、VR(バーチャル・リアリティー)といった体験型のサービスを楽しむことです。この背景には、モノが溢れかえる中、手軽に非日常的な気分を味わえるサービスが消費者から期待されていることが挙げられます。「アマゾン・エフェクト」とは、アマゾンのECサイトが普及していく中で、実店舗を構える伝統的な小売店が苦しんでいる現象です。

 これらはあくまでも変化の一部にすぎませんが、物価の伸び悩みや、10月に控える消費増税、節約志向の増加など、消費動向に敏感でいることは経営で重要なポイントです。

■競合大手との差別化戦略で一定のシェアをキープ

 消費者や業界の動向を読み取り市場で存在感を発揮している企業の例として、湖池屋が挙げられます。湖池屋はスナックメーカーの老舗です。売上規模は江崎グリコやカルビーといった競合大手には及ばないまでも、独自のポジショニング戦略で一定のシェア確保に成功してきました。

 湖池屋といえば「ポテトチップス」や「カラムーチョ」といった定番商品を抱えていますが、2017年2月に発売したプレミアムポテトチップス「KOIKEYA PRIDE POTATO」は通常の約1.5から2倍という価格にもかかわらず異例のヒットを収めました。物価の伸び悩み傾向や消費者の節約志向という逆風もある市場環境の中で、なぜこのような高価格の商品が成功したのでしょうか。またこの商品戦略に至った背景には、どのような考え方があったのでしょうか。

■消費者理解と差別化で生まれたプレミアムポテトチップス

 湖池屋の市場分析と、商品戦略の背景にある考え方を読み解く上で参考になるのが、同社が2017年に発表した決算資料です。資料では、社会全体に世帯人数の減少、女性の社会進出やローカル価値の増加といった傾向があり、消費スタイルが変化していると分析しています。具体的には、「安かろう悪かろう」や「購入前に徹底的なリサーチを行う」というパターンよりも、利便性や気に入った付加価値で選ぶケースが増えているそうです。

 つまり湖池屋は消費者に対して、価格や品質にシビアであるだけでなく手軽に楽しみたい欲求があると考えていることがわかります。その中で生まれたのが、老舗スナックメーカーとしてプライドをかけて付加価値作りを行った高価格ポテトチップスでした。

 消費者や市場動向を徹底的にリサーチして、競争相手との差別化を効果的に行う湖池屋のマーケティングの手法は、規模や業種を問わず参考にできる点が多そうです。

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