ウニもヒトも幽門のメカニズムは似ている 筑波大学の研究
2019年3月11日 18:02
幽門というのは胃と腸の接続部分のことである。バフンウニとヒトにおいて、この幽門を開口する神経細胞メカニズムは共通しており、両者の共通祖先の段階でこのシステムが既に確立されてきた可能性が強く示唆される。以下、筑波大学 生命環境系 下田臨海実験センター 谷口俊介准教授と谷口順子研究員(日本学術振興会特別研究員)らの研究による。
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脊椎動物(当然ながらヒトも含まれる)においては、胃や腸などの消化管の機能は、神経堤細胞なるものによって制御されていることが以前から知られている。この神経堤細胞というものは脊椎動物にしか存在しない。故に、消化管制御の仕組みが動物の進化の過程でどのように獲得され、多様化してきたのかについては未知の問題であった。
そこで今回の研究では、脊椎動物と同じ後口動物に属しているが神経堤細胞は持たない棘皮動物(無脊椎動物の一種)であるウニの幼生の消化管に着目し、幽門の開閉がどのように制御されているかの探求が試みられた。
結果として、ウニの幼生の幽門の付近には神経様細胞が存在し、これが生産する一酸化窒素が幽門の開口を制御している、ということが明らかになった。脊椎動物の腸管神経も一酸化窒素を幽門開口を制御しているため、両者は類似しているというわけである。
ウニのこの神経様細胞の由来を調べると、内胚葉に由来すると言うことが明らかになった。左右対称動物では神経は外肺葉に由来するとこれまでは考えられてきたため、この神経様細胞が内胚葉由来であることを解明したのは、進化の研究の観点から大きな意義のあることである。
なお研究の詳細は、「Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America (PNAS)」オンライン版に公開されている。(記事:藤沢文太・記事一覧を見る)