「軽量・高強度」PAN系炭素繊維複合材料、自動車や航空機において拡大へ

2019年3月10日 11:38

 富士経済は7日、自動車や航空機、建築などにおいて拡大が期待されるPAN系炭素繊維複合材料(CFRP、CFRTP)の世界市場調査結果を発表。30年の世界市場は17年比2.6倍の3兆5,800億円と予測、軽量かつ高強度という特性から各産業にて大きく伸長するという。

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 PAN系とは「炭素繊維」にポリアクリロニトリル(PAN)を合成させた高性能な複合材料。大きく「CFRP」と「CFRTP」の2つがある。

 最も多く使用されているのが「CFRP」。母材に熱硬化性樹脂を用い、俗に「カーボン」と呼ばれている。「CFRTP」は「CFRP」をより進化させ、短時間で低コスト成形を実現させた材料である

 注目用途市場は以下の通り

■自動車
 30年予測は17年比5.6倍の5,605億円。現在は自動運転開発技術に業界が注力しているため、PAN系の採用が延期になっているが、25年頃から「CFRP・CFRTP」の利用技術向上により、量産モデルの採用を予測している。

 また電気自動車や準高級クラスにおいても燃費向上から採用が見込まれ、主要メーカーによる車体プラットフォーム共通化の流れに乗ればさらなる普及も期待できるという。

 現在は欧州メーカーの研究・開発が進んでいるが、将来は中国社メーカーによる採用が拡大するとしている。

■航空機
 30年予測は17年比2.5倍の1兆4,261ち億円。航空機用途は既に安定生産期に入っているため堅調な拡大が予測されている。

 現在の市場はエアバス「A350 XWB」やボーイング「787」などの炭素繊維複合材料比率50%程度の機体にて採用が増加。25年前後には小型機種の次期モデルにおいて採用拡大が見込めるため、さらなる伸長が期待されている。

■建築・土木
 30年予測は17年比2.9倍の5,469億円。主にコンクリートや鉄筋等の骨格構造の強度補強に採用。老朽化補強や耐震補強により需要は増加傾向にあるという。

 現在は骨格構造本体への採用が少ないため、一部のデザイン性の高い建造物に限られているが、今後は中国や新興国においてインフラ整備の拡大から安定的に需要が見込めるという。

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