卒業ライブで答えを出した「西野七瀬らしさ」
2019年2月25日 11:39
押しも押されもせぬ乃木坂のエース、西野七瀬。彼女のファンなら、1度や2度はこんな質問をされたことがあるだろう。
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Q「西野って歌が上手いの?」
A「下手じゃないし雰囲気がいいんだよ」
Q「西野ってダンスが凄いの?」
A「基本に忠実だし、世界観を表現できてるよ」
Q「演技力抜群なの?」
A「俺は好きだよ」
Q「ルックスが神がかっているの?」
A「俺にとっては」
Q「バラエティ班? トークが上手いの?」
A「いや、どっちかっていうと苦手じゃないかな」
Q「じゃあ何がいいんだよ」
A「…………全部」
そう西野七瀬は、何かとびぬけた武器があるエースではなかった。メンバーでナンバー1だ! と言えるものは、何一つなかった。
謙虚で、努力家で、実はいたずら好きでもあり、その一方で責任感は強く、ストイックでもある…けど、それはデータや数値で表せるものでもない。とにかく「なんとなく」なファジーな感覚の中で、エースとして頭角を現してきたメンバーである。
しかし、その「なんとなく」が2月24日、京セラドームに5万人(しかも倍率20倍)、映画館でのライブビューイングに10万以上の人間を集めたのだから、きっとそこには「なんとなく以上」のものがあるのだろう。それが何なのかを見極める、おそらくは最後のチャンスだと思いながら、奇跡的に抽選で手に入れたチケットを握り締めて記者はステージを見つめていた。
最後のライブ……西野七瀬は笑みを絶やさなかった。
周囲のメンバーが感極まって涙を流す時も、そんなメンバーと抱き合って最後の瞬間を分かち合う時も、西野は笑っていた。
テレビに映る彼女しかしらない人は、彼女が基本困り顔を浮かべ、所在なさげに視線を下に向けていたり、必死の作り笑顔で無理やりテンションをあげていたり、魂が抜かれたような死んだ目でぼーっとしている姿を覚えている人も多いだろう。少なくとも2年前ぐらいまでは、彼女はそんなキャラクターであった印象を記者も持っている。
だが、ライブの時の彼女は、終始楽しそうでテンションが高く、時には挑発的な目で観客を煽るような(「他の星から」の時)仕草まで見せていて、テレビで見る「守ってあげたい」と思わせる弱々しさとは正反対の表情で観客はもちろん、メンバーの背中を押し続けてきたエースだったのである。
唯一(?)声を詰まらせた最後の挨拶の際、彼女は、ライブは私を見て欲しいという感情を唯一爆発させることができる場所だったという内容の話をした。そう、彼女の武器は「愛されるメンバー」が揃っている乃木坂の中で、唯一「愛させる」吸引力を持つメンバーだったのである。
乃木坂一の悪女、そして乃木坂一のマインドコントローラーでもある西野七瀬。
彼女がかけた魔法にいつまでも浸っていたいと思わせる魔女の新しい挑戦に拍手をおくりたい。(記事:潜水亭沈没・記事一覧を見る)