カルロス・ゴーン被告は、弘中惇一郎弁護士に何を期待しているのか?
2019年2月21日 09:32
拘留生活が3カ月を超えたゴーン被告は、食事が口に合わず体重が10㎏前後減少したと伝えられる。日産のカリスマとして、思うがままの贅沢な食生活を送って来た人物の口に、拘置所の食事が合うはずがない。「拘置所なら効果的なダイエットが可能!」と極論する人もいて、健康を維持するための必要な栄養は提供されているが、高価な食材は使用されていないため、食卓に“華”はなく、食欲も湧かないかも知れない。
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1月8日に拘置理由開示手続きで東京地裁に出廷した際には、眼光鋭く引き締まった体から、以前にも増した凄味を感じたとの報告もある。検察に対する闘争心は、ますます燃え上がっているようだ。
16日にブラジルの主要紙に「ブラジル弁護士会が、ゴーン被告が不当に拘留されていることが人権侵害にあたる」と日弁連に懸念を伝えたことが、報じられている。文書が家族を通じた弁護士の要請により作成されているとのことなので、家族の背後にゴーン被告の強い意志が感じられる。
早期の保釈を実現できなかった大鶴基成弁護士の後任に就任した弘中惇一郎弁護士は、「無罪請負人」と喧伝されているが、当然のことながら、明白に有罪である人を無罪にできる訳ではない。話題性の高い事件に関わって来たキャリアがあり、「無罪請負人 刑事弁護とは何か」という著作もあることから、結び付けて「無罪請負人」と称されている。確かに今回事件に関しては法曹関係者の中からも、「有罪にできるのか?」という疑問の声が上がったり、「そもそも特別背任を立件できるのか?」という声を上げている人もいるため、突っ込みどころが多く、弘中弁護士の力量が発揮できる事案かも知れない。ゴーン被告の期待に適う弁護士かどうかは、今後明らかになるだろう。
弁護士交代の翌日14日には東京地裁の下津健司裁判長、東京地検公判担当検事とともに就任早々の弘中弁護士も出席して、3者協議が行われた。ゴーン被告は無罪を主張する意向であり、いよいよ弁護側と検察側が真剣勝負の緒についた。
現在の不当な拘束(ゴーン被告の見方)から早急に開放されることにゴーン被告がこだわるようなら、弁護士交代劇の第三幕さえ予想されないわけではない。弘中弁護士の最初の仕事は、ゴーン被告に現在の状況を十分理解させて、落ち着いた弁護環境を整備することだ。悍馬(かんば・暴れ馬)を乗りこなす騎乗力が求められている。(記事:矢牧滋夫・記事一覧を見る)