日本のキャッシュレス決済、一気に本格化?(下)
2019年2月9日 09:29
激しい競り合いを続けるPayPayもLINE Payも、親会社が営業基盤に恵まれた体力充分な企業なため、どちらにも白旗を上げる気配はなく、簡単に勝負の決着が付くことはなさそうだ。そのことに気づいてポイントの割り増しをやめる日が来るのか、それともすでに気付いているがやめられない状態なのかは不明だが、利用者はよりお得感が高く、利便性に恵まれた方をちゃっかり利用するべきだろう。
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インターネットの黎明期に、モデムを無料配布して営業基盤を確立したソフトバンクグループには、大きな決断が上々の首尾を収めたという成功体験がある。その延長線上にPayPayの初回「100億円あげちゃうキャンペーン」があったのだろうが、キャッシュ同等の意味があるポイント還元と、モデムの無料配布には根本的な相違がある。モデムは一度設定すると、交換する手間や費用が負担になるため暫くの間は利用が固定化する(安定する)が、キャッシュレスサービスの場合は利用者の気まぐれでどんなサービスを利用することも可能であり、特定のサービスを利用継続させるモチベーションが働かない。派手な還元サービスに対する反応は敏感だが、キャンペーンが終了すると他社を利用することに何ら抵抗がない。つまりいくら高額の還元サービスを行っても、固定客になってくれるとは限らないのだ。まさに終わりの見えない消耗戦の中にある。
KDDIは4月から「au PAY」としてQRコード決済サービスを開始することが予定されており、楽天が決済サービスや全国の加盟店網を提供すると伝えられている。ネット通販の雄でありながら10月には携帯電話事業に乗り出す楽天が、KDDIと連携してどんな風に「au PAY」と関わるのかということも注目される。KDDIが打ち出す施策によっては、PayPayやLINE Payが更なる対抗策を迫られる可能性だってあるだろう。
三菱UFJフィナンシャル・グループ、三井住友FG、みずほFGの3メガバンクがQRコードの規格統一で合意した「BankPay」(仮称、バンクペイ)も、地方銀行を巻き込み19年度の実用化を目指して詰めの段階にある。
そこに今秋に予定されている、消費税増税対策の政府のポイント還元策が上乗せされ、キャッシュレス化への途切れない動きが続く。日本全国がポイント還元祭り状態になると、世界の趨勢に後れを取っていた日本のキャッシュレス化への動きが、一気に本格化するのではないだろうか。(記事:矢牧滋夫・記事一覧を見る)