寿命についての最新研究 叔父や叔母の寿命の影響を受ける可能性が明らかに

2019年1月26日 11:06

●叔父と叔母の寿命の影響

 オランダのライデン大学病院とアメリカのユタ大学は、科学誌『ネイチャー・コミュニケーションズ』に寿命についての最新の研究結果を発表した。研究では、系図から見る人間の寿命は、両親だけではなく3親等にあたる叔父や叔母の寿命も影響することが判明したとしている。

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●1740年にまでさかのぼる30万人以上のデータを分析

 研究チームは、ユタ大学とオランダのゼーラント州のデータベースを使用し、1740年までさかのぼる2万以上の家族の系譜を分析した。対象となったのは、31万5千人に及ぶ。

 ライデン大学疫学者であるニルス・ファンデンベルク教授によれば、両親の寿命が同性代の人々の寿命の上位10パーセント内に位置する人は、若年で亡くなる確率が31%低くなるという。しかし、人間の寿命は両親の遺伝子からだけではなく、3親等にあたる叔父と叔母の寿命の長さも無視できないことが今回の研究で判明した。

●異なる環境の変化でも変わらない遺伝子

 研究チームはまた、社会的に異なる環境にあっても3親等の寿命が子孫に及ぼす影響は変わらなかったと結論付けている。

 例えば、今回研究の対象となったオランダのゼーラントとアメリカのユタでは、環境に大きな相違があった。19世紀、ゼーラントは比較的人々の動きが少なかったのに対し、ユタは移民の流入など大きな動きが記録されている。また、歴史的にゼーラント州は飲料水の確保が困難であった地域であるが、ユタは豊富な水量で知られている。

 こうしたさまざまな相違にもかかわらず、寿命に関する分析では2地域はほぼ同じ結果が出ている。研究者たちは、「長寿遺伝子」の存在を裏付けるものだと主張している。

●疾患に関する研究より困難であった寿命の研究

 ライデン大学の分子疫学教授エリーネ・スラッグブームによれば、遺伝子の研究の中でも寿命に関する分析は、疾患に関するそれよりも困難を極めたという。

 当初は、100歳の長寿の人々の家族についてのみ分析が進められていたが、彼らの長寿は遺伝学な要素よりもライフスタイルや偶然の結果であることが多く、遺伝学における研究は頓挫した。結果的に、1740年からのデータを地道に研究することになったという。

●異なる世代、地域別の系図制作の重要性

 一方、研究に参加したユタ・データデンターの所長ケン・スミス氏は、「異なる世代や場所を対象に、個々のデータの分析が可能となる家系図の構築の重要性が浮き彫りになった」と語る。

 あらゆる環境や社会状況の変化にも影響を受けない遺伝子についての研究は、こうしたデータがあってこそ成り立つというわけだ。

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