がん患者の働き方 周囲の理解不足も

2019年1月21日 09:35

 成人した日本人の多くは自ら働く事を望んでいる。人が働く理由はと言えば、生活のためであったり夢を叶える手段であったり人によって様々だ。仕事自体に楽しさややりがいを感じ、いつまでも働いていたいと望む人もいるだろう。しかし中には働きたくても労働を制限せざるを得ない事態が発生してしまうこともある。働きたいという強い気持ちがあったとしても、健康を損ねてしまえば体がついて行かなくなる。病気によって以前と同じように働けなくなるリスクは誰もが抱えているものだ。

 厚生労働省では毎年の死亡原因について統計を取っている。2017年における日本人の死亡原因として最も多かったのは悪性新生物、つまりがんだった。男女合わせた総数では全体の死亡原因うち27.9%を占め、がんに次いで多い心疾患の15.3%に大きく差を付けている事が分かる。

 アフラック生命保険がキャンサー・ソリューションズと共同で行った「がんと就労に関する意識調査」では、がん患者が直面する職場環境を明らかにさせた。調査の対象となったのはがん患者206人の他、周囲の社員103人と経営者103人である。

 がんと診断を受けた社員が診断1年目に取得できた平均休暇日数は65.8日であった。そしてこれが2年目以降になると30.9日まで減少する。病気のときの休暇取得体制として十分であるかは疑問であり、これによって退職を余儀なくされるケースも少なくはないだろう。

 また復職後に関しては、自身の体調が以前の7割以下であると感じるがん患者が半数以上であった。ところがそれに対して周囲の約5割以上は、復職してきた部下や同僚を罹患前と同じ状態であるものとして見ている。身体的な辛さと言うものは目に見えるものではなく、本人にしかその加減が分からない部分も大きい。怪我のように外観にはっきりとは現れないケースもあるため、結果として本人と周囲との間に感情や意識の乖離が生じてしまうことも少なくない。

 この調査によってがんの診断を受けた人のうち、職場で誰にも相談しなかった人が約3割も存在している事が分かった。体調などについて相談のしやすい環境づくりと、お互いに理解し合える人間関係が職場には求められているのだろう。(編集担当:久保田雄城)

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