東芝、AIプロセッサの心臓部のIP化 DNNの覇権を目指すか
2019年1月10日 18:35
東芝は7日、先進運転支援システム(ADAS)や自動運転機能の実現に適した人工知能(AI)向けDNN(Deep Neural Network)ハードウェアIP(Intellectual Property)を開発したと発表した。
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今後、DNNハードウェアIPを画像認識AIプロセッサ「Visconti5」に実装し、2019年9月からサンプル出荷。次世代先進運転支援システムへの採用を目指す。
AI分野で最も実用化が進んでいる深層学習。そのアーキテクチャーは、人間の脳を模したDNNというネットワークを多層に重ねた構造を持ち、多層に重ねることで、データの特質を学習(深層学習)し、その学習結果から推論を行う。このアーキテクチャーで最も重要なことは並列演算による高速化であり、専用プロセッサを用いるのが一般的である。
専用プロセッサの手段には、アルゴリズムを最適化してアクセラレータを使用する方法、深層学習の主要要素である行列の積和演算を高速化するGPU(Graphics Processing Unit)で処理する方法、確立されたソフトウェアのアルゴリズムをFPGA(Field Programmable Gate Array)でハードウェア化する方法、SoC(System On a Chip)で専用のプロセッサを開発する方法がある。
今回の発表は、画像処理アクセラレータをハードウェアIPとして開発。そのIPをSoCに組込み、画像認識AIプロセッサを開発する。
東芝は2018年12月17日、DNNのコンパクト化技術を開発したと発表。DNNの性能を維持したままで学習した結果であるパラメータを80%削減。エッジデバイス上での高速推論を可能にする。今回の発表では触れていないが、DNNのコンパクト化技術が高速化の鍵であり、ADAS採用で先行するNVIDIAのGPUに対抗する構図であろう。
●Visconti5の特長
2020年度版のEuro-NCAP(European New Car Assessment Programme:ヨーロッパ新車アセスメントプログラム)では、交差点や出会い頭での衝突回避試験を追加。この要求を満たした上で、次世代先進運転支援システムへの採用を目指す。
Visconti5の構成は、コアにはARMのCPUを、画像処理には汎用DSP(Digital Signal Processor)を、画像処理アクセラレータにはDNNハードウェアIPを組込み、ビデオ入出力には標準のMIPIを採用。
Visconti5のサンプル出荷は2019年9月を予定している。
●AIプロセッサ(東芝、DNNハードウェアIP)のテクノロジー
発表では触れられていないDNNコンパクト化技術、そしてそのIP化というメッセージが重要であろう。DNNハードウェアIPの覇権を目指す構図と考えられるからだ。
DNNの性能を維持した上での80%のパラメータを削減することは、深層学習の実装手段に依存せずに高速化が可能であり、推論時には単純計算で5倍の高速化が図れる。これを、IPとして特出することは、IP単体での販売も可能になる。
AIプロセッサの上位アーキテクチャーには、東芝のドル箱であるフラッシュメモリとのインターフェースを含む。東芝が培ったIP化技術とアーキテクチャー構成技術が実るかが問われる。(記事:小池豊・記事一覧を見る)