東工大など、バイオマスから再生可能なプラスチック原料を合成 貴金属触媒不要

2019年1月9日 20:27

 東京工業大学と科学技術振興機構(JST)は7日、石油などの有限資源や貴金属触媒を一切使わずにポリエチレンテレフタレート(PET)から代替えが期待されているポリエチレンフラノエート(PEF)の原料を効率的に合成することに成功したと発表した。

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 貴金属触媒を使わないでバイオマスから二酸化炭素(CO2)排出せずに、プラスチック原料を合成する。貴金属を使用しないことは安価な大量生産の道筋を生みだし、CO2排出を伴わない合成は地球温暖化防止にも役立つ。今回の発表は、世界が抱える課題を解決する可能性を秘める。

●ペットボトル・リサイクルの課題

 我々の身の周りにはペット(PET)ボトルが溢れている。数十年前までは缶・ビン・紙パックもペットボトルに代替されている。ペットボトルの特長は、リサイクルできる素材であること、加工しやすく軽いこと、食品規格に準じた衛生的な容器であること、加えて透明で割れにくいことである。日常では、リサイクルのために分別して回収している。

 廃棄物を3つのR、発生の抑制(Reduce)、再使用(Reuse)、再利用(Recycle)で取組み循環型社会の構築を国際的に推進しているが、ペットボトルはその中でも優等生だ。PETボトルリサイクル推進協議会の統計データによれば、日本の2017年度リサイクル率は84.8%に達する。欧州のリサイクル率41.8%、米国のリサイクル率20.9%に比べて、高いリサイクル率を誇るが、この数値には課題がある。リサイクル量49万8千トンの内の約4割の20万1千トンは海外再資源化量だ。つまり、日本でのリサイクルではない。

 ペットボトルなどプラスチック資源の輸出先は中国であった。

 経済成長を続けてきた中国は、製造業で不足する原料の資源を補う施策として、外国から資源ごみを輸入してリサイクルしてきた。ところが悪化する環境問題への政策の下、2017年末にペットボトルなど一部の資源ごみの輸入を禁止。リサイクルを他国に頼る構図は崩壊した。

●CO2排出しないPEFを貴金属触媒なしで合成

 ペットボトルの課題は再利用に加えて、生産時のCO2排出だ。PEFは、PETと同じような特性を持ちながらも、バイオ由来の樹脂で合成時にCO2を排出しない。このPEFの原料を、β-二酸化マンガン触媒により、再生可能なバイオマス由来の樹脂の合成に成功。

 限られた化石資源を使わずに化成品を製造することは避けられない課題だ。その触媒の設計開発は新たなブレークスルーを生むものであり、地球温暖化の影響を軽減する。

 技術詳細は、米国化学会誌「Journal of the American Chemical Society」オンラインで公開。(記事:小池豊・記事一覧を見る

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