日産ゴーン元会長の逮捕の余波 韓国の自動車業界、崩壊前夜か?
2019年1月7日 09:36
日本ではあまり報道されていないが、ルノー・日産アライアンスに大きな影響を及ぼしているカルロス・ゴーン元日産自動車会長逮捕の影響は、韓国経済にもおよんでいるようだ。韓国の中堅自動車会社として、ルノーサムスンという会社がある、大株主としてルノーが80%出資しており、生産する自動車の半分は日産の受託生産車だ。
釜山にあるルノーサムスン工場の生産能力は27万台/年で、約50%は日産が北米向けに輸出する日本名エクストレイルの兄弟車であるミッドサイズSUV「日産ローグ」だ。ルノーサムスンという社名で日産車を生産するのは、当然だがルノーと日産の長年のアライアンスがあるからだ。
しかし、そのアライアンスにも、今回のゴーン氏逮捕問題が大きく影響し、韓国自動車界が揺れている。
韓国の経済紙、韓国経済新聞はゴーン氏逮捕直後の昨年11月に「韓経『友軍』消える危機……ゴーン会長逮捕、ルノーサムスンにも火の粉降りかかるか」との見出しで、今回の騒動を伝えている。内容は冒頭で伝えたとおりだが、結論として「ルノーと日産が決別し、ゴーン会長が失脚すれば新車生産配分が不透明になるというのが彼の国の自動車業界関係者らの分析だ。日産との関係が悪化すればルノーのモデルの配分を受けなければならない。が、ルノーのモデルのうち日産ローグほど大量に生産するモデルがない状況だ。ルノー・日産アライアンスが存続してもゴーン会長が失脚すれば日産側の影響がさらに強まり、新車生産配分が日本の九州工場などに渡るかもしれない」と警戒感をあらわにしている。
また、朝鮮日報も2018年12月の記事で「生産台数の半分は日産向けの韓国ルノーサムスン、ゴーン会長逮捕に危機感」と報じた。
そのなかで、「ルノーサムスンは日産から受注しているローグの生産分がなくなれば、工場稼働率が50%に低下し、立ち行かなくなる構造だ。さらに、ローグの生産契約は来年(2019年)の9月に期限を迎える。このため、ルノーサムスンは釜山工場の生産性、競争力をルノー本社に積極的にアピールし、新たな生産契約を獲得する交渉を進めている。ところが、円安で日産の日本国内の工場の生産コストが徐々に低下し、競争が激化している。
さらに、ルノーサムスンは12月に、もともと強かった労働組合で、強硬派の労組委員長が選出され、徹底した賃金闘争を予告している。工場生産ラインでの労働力コストが日本を上回る可能性がある状況で、日産がルノーをけん制することになれば、来年の受託生産の確保は不透明になる。2013年時点に、ルノーグループ内で生産性ランキング25位にとどまっていた釜山工場が日産ローグの受託生産契約を結べたのは、ゴーン会長の決断があったからだとされる。頼みの綱がゴーン会長だったと伝える。
そもそも、近年の韓国自動車業界の低迷は目を覆うばかり。韓国中央日報によると、韓国を代表する自動車メーカー「現代自動車」の2018年7-9月期の営業利益は、前年比76%のマイナスで、2010年に国際会計基準が導入されて以来、最低だったと伝える。
加えてこの問題の先行きに大きく影響しそうなのが、2018年秋に韓国最高裁が下したいわゆる「徴用工判決」で、日韓関係は政治的にも経済関係でも史上最悪といえる状況になっている。韓国に進出する日本企業関係者は、韓国でまともな企業活動が行なえるのか“大いに疑問だ”と考え始めたからだ。韓国自動車業界の未来は暗いと言わざるを得ない。(編集担当:吉田恒)