地球温暖化対策の観測衛星「いぶき2号」の現在 JAXA

2019年1月7日 09:00

 昨年、日本各地で続いた猛暑日や酷暑日、記録的な豪雨などにより、多くの被害を出したことは記憶に新しい。これら異常気象の大きな原因と言われている温暖化現象は、大気中にある二酸化炭素やメタン、対流圏のオゾン、フロンなど、赤外線を吸収する気体である「温室効果ガス」の増加によるものと言われている。対策の一環として、宇宙航空研究開発機構(JAXA)は、宇宙から温室効果ガスの観測を行っている。

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 昨年10月29日に打ち上げられた、温室効果ガス観測技術衛星「いぶき2号」(GOSAT-2)には、「温室効果ガス観測センサ2型(TANSO-FTS-2、以後FTS-2)」を搭載し、温室効果ガスを観測している。12月12日から初期機能確認の運用を行っており、FTS-2が正常に動作することを確認したと、同26日にJAXAが発表した。引き続き、初期機能確認を2019年1月末まで行い、その後定常的な観測運用へ移行する予定だ。

 「いぶき2号」はJAXAと環境省、国立環境研究所(NIES)の3機関による共同プロジェクトである。軌道高度は613キロメートルで発生電力は5,000ワット、設計寿命は5年間の予定となっている。2009年から運用中の温室効果ガス観測技術衛星「いぶき(以後、初号機)」(GOSAT)の後継機である。初号機の設計寿命も5年の予定だったが、現在も稼働している。

 FTS-2の特徴は、初号機に比べて温室効果ガスの観測精度が高まったことや、新たに一酸化炭素の観測ができるようになったことがあげられる。また初号機には無かった「インテリジェントポインティング機能」を備えており、雲で視界が遮られると雲を避けて晴れている場所に移動し観測を行う。この機能により地表付近の情報が得られる晴天データをより多く観測できるようになった。今回、視野カメラにより自動で雲を避けて観測する機能が正常に動作していることも確認された。

 「いぶき2号」は太陽同期準回帰軌道という、太陽同期軌道と準回帰軌道を組み合わせた軌道にあり、衛星は常に太陽からの光の角度が同じになっている。また衛星が地球を一周するたびに、観測する場所が少しずつずれていき、6日後に同じ場所に戻ってくる。初号機は3日後だったことから、観測地域が約2倍に広がったことがわかる。

 また、アメリカ航空宇宙局(NASA)が2014年に打ち上げた、大気中の二酸化炭素を全球観測する衛星、OCO-2(Orbiting Carbon Observatory-2)とは、酸化炭素濃度を測定するという目的で協力しあっている。今回、OCO-2が同じ場所で観測した二酸化炭素の結果と照合することで、FTS-2の機能を調べることが出来たという。

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